11.ホムンクルスの作り方
「なんで生命を作りたがる?」
「わしの場合は旅仲間がほしかった。守れるものがな。エバーワールダーなんて守る必要もないくらい個々が強いからな。」
「そうかい?ガロウ君」
「ないな」
互いに護りあっているだけあって、二人にはイツツデの理由は理解できなかった。ヤマメは手を差し出し、続けて続けてと促す。
「ツキヨが教えてくれんというわけなら、わし達異形でないエバーワールダーを生み出すことのできる、アヤシとハジメにも聞きに行ったんじゃ。しかし、収穫なし。あの二人も教えてはくれんかった。
それで、どうしたのか。トキトがバイサーバからミュータントに関する情報を教えてくれた。どうも、それを作ったのはエバーワールダーらしいということも付け加えてな。」
この場にいるほとんどがそのミュータントとは、あのピラとボムだと分かった。
ざわめく空気を物ともせず、イツツデは話をつづけた。
「ツキヨには図書館から追い出されたが、何とか忍び込んでそいつのアカシックレコードを見つけようとした。」
「あったのか?」
「あいつはああ見えてかなり豆な奴なんだよ。アルファベット順に並んであったよ。」
イツツデは、クククっと固く笑ってから話を再開した。
「まったくいかれた内容だった。何故かエッドはオスからの採取物から始めたのさ。それは近しいものは作れたがね、全くの見当違い。知識を述べることはできるが少しも動けない。か弱いものだった。
次はメスからの採取物。また形は作れたが、常に血を与えなきゃいけなかった。そもそもエッドは食べるために作ったのに、さらに腹を空かせる結果になっちまったのさ。
そして最後に、水35L、炭素20㎏、アンモニア4L、石灰1.5㎏、リン800g、塩分250g、硝石100g、硫黄80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、その他少量の15の元素。これを導き出した。ヤマメなら分かるじゃろ?あの我々の姿を模したバイサーバ人どもの構成物だ。」
「あと、アカシックレコード。ハーモニウムを仕込んだか」
「そうともよ。ハーモニウムをどこから仕入れたか分からんが、二体目を作った後にツキヨが現れて、例の【場所】に連れていかれたわけだ。
わしの場合、それを読んだ後に連れていかれたがね。」
ヤマメが腕を組み替えてから、コロの方を振り返る。
視線で、何故イツツデを呼び出したのか思い出した。
「そうでした、イツツデさんには、【どこかにある場所】の位置を教えていただきたいんです。」
「位置か。あっちに行ってからはもちろん場所の橋から端まで歩いたとも。それで星さえ見れば帰ってこられるはずのわしが帰ってこられなかったのだから、答えは一つ。」
分かるかヤマメ、と流し目でヤマメを見る。
うええ、っといってからヤマメは答えた。
「空だな。空に島があるのか」
「そう。バイサーバにはあることのできなかった出来損ないの島がな。」
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