第310話  海上戦




朝焼けと共に日が昇りイングマルの船は高速で移動し順調に航海していた。




罪人は目隠しをされたまま船倉につながれている。


イングマルは舵をエーギルに任せてマストのてっぺんの射撃台で見張りをつづけた。





罪人も騎士の中にも初めて船に乗る者がいて数人が船酔い気味で気分悪そうであった。




いつものようにオートミール粥を作ったがイングマルとエーギル以外食欲は無くあまり食べなかった。













その日の午後、後方に船影が見えた。





かなりの高速のようで、どんどんイングマルの船に近づいてくる。




イングマルは「やっぱり簡単には行かせてくれないか?・・・・」とつぶやきマストから降りてくると皆に海賊に捕捉された事を伝えた。













エストブルグに待機していた海賊は7隻であったが出発は翌日以降と聞いていたのでこの日はまだほとんどの船は準備できていなかった。


乗組員の多くは売春宿にいる始末であった。



それに陸の襲撃者たちが事前の打ち合わせで「必ず成功させる!海賊の出番はないぜ!」とほざいていた。






その伝令が血相変えてやってきたとき、すぐに動けるのは一隻だけだった。


幸か不幸か海賊の中で動けたのは最速の中型船で最も凶暴と恐れられていた。




抜け目ないこの海賊の船長は陸の賞金稼ぎも間者の言うことも、そしておそらく仲間の海賊たちのことも信じていなかった。



自分の本能のみを信じて行動している。


その為だれも陸に上げず待機していた。





伝令の知らせを聞いた船長は「すぐに出港だ!!」と檄を飛ばし船を出発させた。















帆船の場合、全長が長いほうが最高速度は早くなる。




優秀な乗り手を沢山乗せ、総帆にしたこの船は数時間でイングマルに追いついた。










イングマルは手際よく船中に盾を取り付けていきクロスボウを装填していき完全武装になった。



騎士たちもイングマルのやることを他人事のように黙ってみていたが「はっ」と我に返り自分達も自分の装備を準備した。






みるみる内に相手は近づいてくる。




中型の船だがイングマルが今まで見た海賊船の中では一番速く、しかも大きさの割には小回りもいいようである。




騎士たちも甲板に上がって相手を眺めている。





海上では陸と比べ比較する物が少なく距離感が分かりづらい。




実際の距離よりかなり近くに見える。




ざっと見た感じでは60~70名近く乗っているようで、すでに多くの者がロングボウを構えていた。



騎士たちは相手の数の多さにひるんでいる。








海賊船は横並びになるとどんどん近づいて来てロングボウの射程に入ると躊躇することなく一斉に放ってきた。




一度に50本近くの矢が降ってきたがエーギルは慌てることなく舵を切り矢はすべて外れた。



騎士たちもロングボウを放ったがすべて外れた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る