第308話 合流
城から出てすぐに襲撃を受けたということはこちらの事情を知られている。
内通者がいることは間違いない。
イングマルはジェームスと役人のオスカーそれに騎士たちを呼び、作戦の詳しい内容を伝えた。
「今夜裏口から出ます。傭兵の人たちには城の前でかがり火をたいてもらい一晩待機してもらいます。
罪人を護送馬車から僕の馬車に移します。
明日、空の護送馬車を傭兵の人たちと共に陸路エストブルグに向けて出発してもらってください。
くれぐれも傭兵や使用人たちには今夜出るとは言わず、作戦は翌日に延期すると言っておいてください。」と言った。
皆黙ってうなずき準備を始めた。
その後護送馬車から罪人たちをイングマルの馬車に移そうとしたら罪人たちは大声でわめきだした。
「おいッ!近くにいるやつッ!聞いているかーッ?!もう一度出るぞーッ!」とわめいている。
イングマルは棍棒を持ってきて罪人たちのあごをぶん殴って気絶させるとロープでグルグル巻きにして身動き出来なくし猿ぐつわをして頭から袋をかぶせた。
その後1人ずつ放り投げるようにしてイングマルの馬車に乗せた。
荷台にシートをかぶせて外から見えないようにした。
イングマルの情け容赦ない行動を騎士たちは黙って少し引き気味に見ていた。
皆罪人たちの言っていた「後で血祭にする」ということが頭にこびりついていて自分たちが不利な状況だと思い込んで少し腰が引けている。
「罪人たちが奴らの手に落ちたら?自分たちは報復されてしまうのでは?」
「ここは罪人たちを大切に扱い、恩を売っておいた方がいいのでは?・・・」
などと考えている者もいる。
イングマルはそんな皆の心を知ってか知らずか、迷いを払拭するかのように「罪人は罪人らしく扱う。」 と容赦しなかった。
イングマルの馬車に5人の罪人を横たえてシートをかぶせさらに3人の騎士が乗り、もう一台の普通の荷馬車に役人のオスカーと残りの騎士7人が乗った。
ジェームスは城に残った。
真夜中、2台の馬車は明かりを点けず城の裏口からこっそり出ていった。
イングマルの馬車は先頭を行き、馬は夜目が利くので迷わず自分の船に進んで行った。
もう一台も静かに後をついて行く。
河のほとりまで来てイングマルがランプに火をともして合図するとすぐに川岸から明かりが灯った。
近づいて行くとエーギルがランプを掲げて待機していた。
「遅かったの、待ちくたびれたわい。」エーギルはそういうと歩み板をかけた。
イングマルは「お待たせ!ちょっとトラブってね、すぐ出れる?」と聞いた。
エーギルは「いつでもいいぞ。」と言った。
気を失ったままの罪人5人をまず乗せ騎士と装備を乗せて手際よく馬と馬車を乗せてロープで固定した。
騎士10人、罪人5人、役人のオスカー、エーギルとイングマル全部で18名。
イングマルはカヌーに乗ってゆっくり船を曳いて川の中央までやってきてカヌーを引き上げると帆を張って出発した。
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