第219話  広場のバザール




イングマルは休みの度、船の改造作業をする振りをしながら密かに用意しておいた変装用の頭巾を被り誰にも見つからないように町に出掛けた。




子供たちは元ギャング団の幹部連中や戦闘員が作ったいくつかのチームに別れて一緒に行動していて子供たちだけにならないようにした。



イングマルはときどき彼らの行動を見守りながらならず者の貴族たちを探していた。




探すと中々見つからないものでしばらくは何事もなく過ぎた。





だがならず者の貴族は誰か分かった。




中心人物はハルトマン侯爵家の長男でミハエル・ハルトマンという、回りからキングと呼ばれている。


他にも伯爵家、男爵家の者もいる。




実家は王都にあり今は城郭学校に勉強に来ているが、学校にはほとんど行かず好き放題している。


家にはほとんどおらず剣術道場みたいなサロンを根城にしていてそこに出入りしている仲間たちと徒党を組んで金が無くなると悪さをしに行く。




その事が分かってからイングマルはそのサロンを見張るようになった。






だがこの日は間の悪いことにたまたま監視する前に彼らは出かけてしまいどこに行ったかわからなくなってしまった。




この日は町の広場で小さなお祭りがありバザールが開かれていた。




イングマルはすぐそこに向かい彼らを探した。




が、探すまでもなかった。 



彼らはチンピラの見本のようにバザーの店を荒らし奪った食べ物を食べ散らかしなが売上金をかっさらい、うろついて女をからかい文句を言う人を殴る蹴るしていた。



まずいことにちょうどそこに造船所の連中と出くわした。



さっさと逃げればいいのに相手は5人しかいないのと元ギャング団の幹部連中戦闘員が一緒にいることで気が大きくなってしまったのだろう、彼らの前に立ち塞がった。



「お前らいい加減にしろ!もう勘弁しないぞ!」元幹部の一人が叫んだ。




「ああ?何だって?」


「ドブネズミどもがなんか言ってるぞ!」彼らはニタニタ笑いながら元ギャング団たちを眺めた。




元ギャング団たちは棒をもって貴族たちを取り囲んだ。



その回りを遠巻きに町の人が見つめた。




「クックックッ、おもしれぇ。」そういうと貴族たちは剣を抜いた。




少しにらみ合いが続いた。



「どうした?さすがネズミだな、数が多いだけか?」と貴族は挑発した。



「クソがーッ」と叫んで元ギャング団は一斉に突っ込んで行った。



しかし貴族はひるむことなく彼らの棒を剣で払い退けると次々と斬られてしまた。




あっさりやられてしまい元ギャング団は逃げ散ってしまった。




棒と剣では勝ち目があるはずもなかったがそれだけでなく貴族たちはそれなりに剣術が使えるようだ。



取り残された小さい子供たちと逃げ遅れた元ギャング団は貴族たちに剣を向けられ金を出すよう脅された。



回りには大勢人が見ているにも関わらず堂々と金を巻き上げていた。





イングマルは頭巾の上からさらに手ぬぐいで顔を覆い落ちていた棒を拾い上げると子供たちの間に割って入った。




「なんだお前?こいつらの仲間か?」と貴族は気配も感じさせずいきなり表れたイングマルに驚いて聞いた。




「た、ただの通りすがりだ・・・」イングマルはわざと裏返ったような声で答えた。



貴族たちはその声を聞いて相手はひるんでいると思い「ビビってんじゃねーぞッ!引っ込んでろッ!」と叫んでイングマルに斬りかかってきた。



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