バチガミ様が行くっ!
こうじ
プロローグ
今日もニュースで様々な事件が報道されている。
だが大体の人は無関心を通している。
自分には関係ない、そんな事を思っている。
いつ、自分が当事者になるかわからないのに……。
一人の女子学生が新聞を駅のホームで読んでいた。
黒いセーラー服に膝丈のスカート。
今時では古いセーラー服。
黒くて長い髪は風でなびいている。
通り過ぎる人々はチラチラと少女を見ている。
今時、スマホならともかく新聞を読んでいる少女なんてなかなか会う事も無いだろう。
「もうすぐ電車が参ります。黄色い線までお下がりください。」
少女は新聞をたたみ電車が来るのを待っていた。
そんな少女の後ろに人が立った。
その人物は突然少女の背中を押した。
少女は前に倒れそのままホームから落ちた……。
「うおっ!?」
少女を押した人物、中年男性のスーツを着た男はいつのまにかホームの下で倒れていた。
「な、なんでだっ!? なんで俺が下にいるんだっ!?」
『貴方は自分から落ちたのよ。』
声がしてホームを見上げると例の少女がいた。
「なっ!? どうしてお前がそこにいるんだっ!?」
『貴方が私を落とそうとした瞬間、〈交換〉したのよ。」
そう言うと少女は手にしていた新聞を男の方に投げた。
『この記事は貴方でしょ?』
「はぁ?」
男は新聞を手にした。
『女子高生が駅のホームから転落、自殺か?』という見出しの記事が書かれていた。
『私は知っているわ。彼女を突き落したのは貴方でしょ?』
「な、何を証拠に言ってるんだっ!?」
『それだけじゃない、貴方は何回も同じ事をしている。この駅で、同じ場所で。』
「だから、何を言ってるんだっ!?」
『じゃあ、聞くけど何故私を落とそうとしたの?』
「そ、それは……。」
男は押し黙る。
『理由は会社でのストレス、人が多いこの時間を狙って罪を重ねていた。でも、それはもうお終い。貴方が犯した罪は自分で償いなさい。』
電車の音がだんだん近づいてくる。
「た、助けてくれっ! だ、誰かここから上がらせてくれっ!」
『無駄よ、この〈空間〉には私と貴方しかいないんだから』
そこで男は初めてこの空間の異常さに気が付いた。
人の声はしない、アナウンスも無い、聞こえるのは少女の声と電車の音。
「な、何者なんだっ!? お、お前はっ!?」
『……人は私を『バチガミ』と呼ぶわ。』
「バ、バチガミ……?」
『罰を与える神、だからバチガミ。それじゃあさようなら。』
男の最後の言葉は電車が通過する音で聞こえなかった……。
これは罪を犯した者が罰を喰らう、そんな当たり前の話
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