かつて戦いのさなか、

関羽（かんう）の左腕を矢が刺し貫いた。

矢傷は間もなく癒えたのだが、

しとしとと雨が降るごとに、

なんだかやけに骨がしくしく痛む。

それを聞いた医者が言う。

「矢じりに毒があったのでしょう。

　その毒が骨に潜り込み、

　腕を内側より食い破ろうとしています。

　ここは骨を割って毒を除去しましょう。

　そうすれば、腕の患いも癒えましょう」

はえーそんなもんっすか。

よくわかんないけど関羽、腕を伸ばし、

早速手術してもらうことにした。

実はこのとき宴会中だったのだが、

関羽、手術でドバドバ血を流し、

その血が桶一杯に貯まるくらいになった。

にもかかわらず、

炙り肉を割り、酒をかっくらい、

いつもの感じで談笑に興じるのだった。

羽嘗為流矢所中，貫其左臂，後創雖愈，每至陰雨，骨常疼痛，醫曰：「矢鏃有毒，毒入於骨，當破臂作創，刮骨去毒，然後此患乃除耳。」羽便伸臂令醫劈之。時羽適請諸將飲食　　相對，臂血流離，盈於盤器，而羽割炙引酒，言笑自若。

羽の嘗て流れ矢に中りたる所と為り、其の左臂を貫きたるに、後に創の愈えたると雖も、陰雨の至る每、骨の常に疼き痛みたれば、醫は曰く：「矢鏃に毒有り、毒の骨に入りたるれば、當に臂を破りて創を作さんとす。骨をい刮き毒を去らしめ、然る後に此の患いは乃ち除かれたるのみ。」と。羽は便ち臂を伸べ、醫をして之を劈かしむ。時に羽は諸將と飲食し相い對せるを請うに適い、臂に血の流離し、盤器に盈つれど、而して羽は炙を割り酒を引き、言い笑いたること自若たり。