長歌もどき

石動 守

一歌 旅立ちの朝

 夢枕 愛しき背子の 呼ぶ声に 応えてみれば 虚舟うつろぶね 

 

 心戻せば 朝風に 飛び行く鳥の さえずりに 想い揺られて 

 

 現世うつしよに 帰りてみれば 我片身 何処に在らむと 乱髪 

 

 梳らぬときを 重ねつつ 覚えてみれば 我思い 

 

 暗き夜空に 望月の 満たせし心 振り捨てて 

 

 澄みし光に 常磐木の 変わらぬ緑 身に染めて 

 

 薄黄のぐしも 掻き分けて 短き刃 握り締め 挑みしかたき

 

 き竹の 遠き別れに 導きの 声も聞こえず 

 

 途惑いし 乱れる歩々に しかれども 

 

 続く梢に 早蕨の 萌え立つ蒼き 柔葉々に 

 

 肩行く風の ささやきを 聞きつつ進む 

 

 その先に 指折り待ちし 友人ともびとと 

 

 向かう地々にも 染み渡る あたう力に 稀人の 

 

 創れる世々も 我道と 堅き心に 漕ぎ出でぬ 

 

 臨みし海に 石走いわばしる 浪速の道を なにものと 

 

 越えて歩まん 夢の波音 

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