第40話  諍い

あの日

君とのいさかいがなかったら

あの恋はなかった と夫は言う


ワイングラスを見つめる

澄んだ瞳に恋をした


偶然の出逢いは

冷え切った心俺のにそよぐ春風のようだった


恋のエネルギーに我を忘れ

季節を感じる肌を忘れ

人の痛みに気づく心も置き去りにした


恋の終焉しゅうえん

かけがえのないものを

失ったことに気づいた と

夫は言う


あの日の諍いから

もう十年の月日が過ぎようとしている


出逢った頃の

優しい目をしたあなたは

いつそよ風が運んでくれるのか

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