第2話 変異体
クロナ村に戻った二人は急いで長老のもとへと向かった。
「レイヴ、ルイン、二人してどうしたというのじゃ。騒々しい」
「ジジ様、森で異変が起きています」
「異変?」
「見たこともない程巨大な化け物の痕跡が見つかったんです」
「ああ、罠に掛かっていた獲物もそいつに奪われたんだ」
「なるほどのう……」
長老のゲイル・マグヌスは思案した。
そしてふと何かを思い出したかのように手を叩いた。
「そうじゃ。恐らく二人が見たそれは魔物という生物じゃろう」
「「魔物?」」
「魔物というのはマナの濃い場所でマナを過剰に吸収し変異した生物のことじゃ。肉体は肥大化、あるいは硬質化等様々な変化が起きるが、最も厄介なのは気性が非常に荒いことじゃな」
「ジジ様は魔物を見たことがあるのですか」
「わしがまだ若い頃に遠く離れた別の地で見たことがある。しかし魔物は本来マナが不安定な土地で発生するものじゃ。この村でそんな話は聞いたことがない」
この世界にはマナの量が非常に不安定な場所が存在する。
その土地の生物のほとんどが魔物に変異してしまう為、人々はそのような土地を避けて生活していた。
そしてそれはこのクロナ村も例外ではなかった。
「それにもしマナに異変があればルインが真っ先に気がつくはずじゃ」
「そのことなんだがジジ様、その魔物が居た場所で大気中のマナの乱れを感じたんだ」
「もしかしたら魔物の取り込んだマナが体内から溢れ出しているのやもしれん」
「だとしたら俺、魔物を追跡出来るかもしれない。ジジ様、俺とレイヴでその魔物を倒してくるよ」
「なんじゃと! いくらなんでも危険過ぎる」
「いえ、ルインの言う通りです。やらせて下さいジジ様。村には俺達と違って戦えない人もいる。被害が出る前に対処すべきです」
「……分かった。ルイン、レイヴ、お前達がそこまで言うならこの件は二人に任せよう。だがくれぐれも無茶はするでないぞ」
「ああ!」
「任せて下さい!」
二人は再び魔物の出現場所を目指し村を後にした。
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