第5話 全貌
──今から2日前。
「いってきまーす」
「はーい、いってらしゃい! 気をつけてね」
土曜日の早朝アルバイトへ向かう為、幸哉は自宅を出た。
そして、その足でバス停へ向かった。
「(あと2分か)」
バス停に到着したのが9時13分だ。
それからバスが到着するなり幸哉はそれに乗り込んだ。
幸哉が座った席は向かって左側の後ろから3番目の席だ。
アルバイト先までバスで30分。
……事故はアルバイト先の近くで起きた。
交差点を黄色信号で右折しようとしたバス。
だが、そこに同じく黄色信号で直進してきたトラック。
全長7mのバスだ、曲がりきれるはずもない。
トラックも相当スピードを出していたようで、止まることができずに衝突した。
トラックはバスの前方左側面に突っ込んだ。その反動でバスは右側に横転した。
バスの車内は運転手の叫び声とともにバスは傾き乗客の悲鳴が聞こえた。
そして、バスは凄まじい音ともに横転した。
「(うわっ。ど、どうなってるんだ)」
バスが横転すると同時に幸哉は頭部を強打したのだった。
幸哉の意識はそこで途絶えた。
事故から数分後、救急車が到着し巻き込まれた乗客達は次々に病院へ運ばれた。
緊急車両が到着した事故現場は騒然としていた。
「……幸哉!」
「幸哉……頼む! 頑張ってくれ!」
知らせを受けた幸哉の両親が病院へ駆けつけた。
その時、幸哉はまだ手術室にいた。
両親は手術室に向かって祈るように手を合わせ俯いていた。
無事手術を終えた幸哉はベットの上で綺麗な顔をして眠っていた。
だが、その頭部には真っ白い包帯が巻かれとても痛々しい姿だった。
──事故当日、幸哉が目を覚ますことはなかった。
その日、両親は一晩中幸哉の傍を離れることはなかった。
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