災害時にデマを流すのは止めような!……「コンテイジョン」

 ――香港の出張旅行から帰宅した妻が倒れ、夫のミッチは妻を病院へ搬送するが妻は突然死亡してしまう。医師はミッチに妻が未知の感染症により死亡した事を告げ、感染の疑い有りとしてミッチを隔離する。しかし、未知の感染症による死亡者は世界各地が現れ始め、感染拡大を招いてしまう。世界規模の流行に、政府や医師、研究者たちは一刻も早いワクチン作成に奔走するが――


 ウイルスの流行による世界規模のパンデミックを描いたパニックスリラー。監督は「トラフィック」「オーシャンズ11」のスティーブン・ソダーバーグ、主演にマット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グゥイネス・パルトローを据えた豪華布陣の映画だ。ちなみに「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストンもちょい役で出演している。


 映画はパンデミックという身近に潜む恐ろしい事態を克明に描いている。古くから、ウイルス等の感染症は人類の生活を脅かしており、ヨーロッパでのペストの流行や、第一次世界大戦を早期終結させたとも言われるスペイン風邪の流行など歴史上でも多くの人々が犠牲になった。そうした殺人ウイルスが今、世界規模で蔓延したら?現実にありえる恐怖がここにある。


 何しろ映画内のウイルスは致死率がめちゃくちゃ高い。「ウイルスに感染してない人」「ウイルスにたまたま抵抗力があった人」以外は大体死ぬという恐ろしい症状で、やたらめったら死んでいくのが恐ろしい。積み上げられた死体袋が事務的に埋葬されていくシーンも淡々としていて返って恐怖を誘う。


 そうしたウイルスを前に右往左往する人々と、立ち向かう人々の話が一環して描かれている。妻と息子をウイルスで失い、残った娘を守ろうとする平凡な父親、CDCの職員として仕事と家庭の間で揺れ動く男、ワクチン開発のために尽力する研究者たちなど、静かながら「戦う」者たちを応援したくなる。


 また、ジュード・ロウが演じるネットブロガーが「ウイルスにはレンギョウが効く」とデマを流して一儲けを企むという、今の世相ならではの「ありえる出来事」も描かれている。SNSが発達して人々が情報をより手軽にやり取り出来る今から見ると物凄い説得力とリアリティがあるのも面白い。


 派手な映画ではないものの、世界を又にかけたパンデミックとその収束までを追い続けるパニックものとして完成度は高いし、一度見れば「手洗いうがいは大切」と思えるようになったり、単なる堰やくしゃみが怖くなるようになる映画だろう。 

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