繧イ繝シ繝?繧ェ繝シ繝舌? 蜀・逡後Γ繝医Ο
ここは……?
俺は……
俺はどうなった?
暗い、何も見えない。
確か俺はあの時、銃に撃たれて……
……あぁ、またか。
もう……4度目だ。
皆は無事……だろうか。
戻れるかどうかは分からないが、早く戻って確かめなければ。
しかし、光も音も無いこの空間で……いや待て、音は聞こえる。
ガタンゴトン、という音と、少しばかり揺れる地面。
何だっけこれ……えーっと…………まさか、電車? 何故?
「ともかく……」
手を横に突き出し、壁を探す。
少し歩いて壁に手が触れると、そこから壁伝いに歩く。
座席にあたるものが無い気がするが、とにかく進む。
歩いていくと、行き止まりに当たった。
暗闇に慣れた目が、ドアの取っ手を映す。
「鬼が出るか蛇が出るか……よい、しょっと!」
ドアを思いっきり横に引くと、電車の客室へと出た。
かなり年季の入ったモノクロの車内には、椅子が全て埋まるほどの人間が座っている。
逆に吊り革と手すりに掴まって立っている人はいない。
自らの格好を見てみると、高校の制服を身に纏っている。
中学のものじゃない、ということは……相澤絡みの事じゃない、のか?
にしても、視界全てがモノクロなせいで頭がおかしくなりそうだ。
窓の外の景色を見ようとした時、前方で何かを落とす音が聞こえた。
その方向に目を向けると、ピンクのスマホが落ちている。
「スマホ、落とし……ま……!?」
見覚えの無い制服を着た女子高生にスマホを渡そうとした時、俺は女子高生が異様な様相を呈しているのに気付く。
顔を始め、肌が露出している部分全てがノイズで乱れまくった映像のようになっていたのだ。
特に顔の乱れようは酷く、どういった顔か識別するのは不可能なほど。
ここまでくるともはやQRコードのようだ。
よく見ると、服に関しても肌ほどではないが若干ノイズが走っている。
「まさか……!?」
他の乗客も確認してみると、皆さっきの女子高生と同じ状態にあり、なおかつ全員が死んでいるかのようにぐったりした座りようを見せている。
「どうなってるんだ……?」
とりあえず持っているスマホを女子高生に返そうとするが、彼女の手はスマホをすり抜けてしまい、持てそうにない。
「……大丈夫ですか?」
声をかけてみたものの、返事は無い。
「……ここに置いておきますよ」
スマホを彼女の近くに置き、他の乗客にも声をかけてみる。
「大丈夫ですか?」
「……」
「ここはどこですか?」
「……」
「この電車はどこに向かってるんですか?」
「君、手紙落としたよ」
「……」
……誰からも応答が無い。
諦めて次の客室の扉を開くと、同じく年季の入った客室が俺を出迎える。
先程と違って座席にはいくらか空席があるものの、乗客は相変わらずだ。
あれ、あのトレンチコートを着た人は少し様子が違うな。
「あの、すみません」
「そこに誰かいるのか?」
トレンチコートを着た男性は口元以外がノイズに侵食されており、声も電波の悪いラジオのような、雑音混じりなものとなっている。
かろうじて喋れる……といったところか。
それにしても、このノイズは一体何を意味しているんだ?
「ここは……どこですか?」
「詳しくは分からんが、どうも命を絶った連中が来るところらしい。実際俺も色々あって身投げしたし、ここに乗ってる連中の中には、遺書を持ってる奴もいた。ま、このまま天国か地獄へご案内、ってところだろう」
だとしたら……三途の川を渡ってるような状況じゃないか! このまま死んでたまるか!
「待ってください! 俺にはまだやるべき事があります。こんなところで死ぬわけにはいきません!」
「そうか。だったら、早いとこ降りちまいな。終点に着けば終わりだが、まだ停車駅があったはずだ」
「分かりました」
「降りたら振り向くなよ。それからここの乗客を調べるのもやめておけ。絶望を感じると、動けなくなる」
「絶望……」
心に巣食う絶望がノイズの正体、ってところか……?
「あの、貴方も一緒に脱出しませんか? こうして話せるのなら、まだ……」
「いや、駄目だ。もう間に合わん。ありがとな、坊主」
「ですが……」
「お前はやりたい事があるから戻ろうとする。そうだろう? だが、もう俺にはそれをやる気力が無いんだ」
「……」
「坊主、俺は死ぬ事をプラスマイナス0になる事だと思ってる。プラスになっている人にとっては、0になってしまう。だが、マイナスになっている人にとっては、0に戻せるってことなんだ」
「なら、生きていたって0に戻せるはずです! それどころか、プラスにだって……」
「真っ直ぐだな、坊主。でもな、それができる人間は、自殺なんて手段は取らないんだ」
「……」
何も言えず俯いたその時、電車が揺れ、動きが止まる。
「ほら、行けよ。やるべき事があるんだろう?」
「はい。ありがとうございました」
トレンチコートの男性の言った事は……頭では理解できる。
だけど……心では理解できない。
そりゃあ、俺みたいな人間ばかりではない事は知っている。
知っているが……諦めるって事は無駄にするって事じゃないか……それで、いいのか?
……………………
………………
開いた扉から電車を降り、薄暗い駅を歩く。
駅構内の構造を見るに、この電車は地下鉄のようだ。
前後の駅名は無く、現在地の駅名はかすれて読むことができない、古ぼけた看板が俺を出迎える。
何か……こういう都市伝説、どっかで聞いたような……
看板の隣には古ぼけているが辛うじて読める地図と一切の時刻表記が無い時刻表があり、古ぼけた白黒のホームは気持ち悪いほどに静かであった。
「出口は……」
目を凝らして地図を読む。
この駅は1番出口と2番出口しかないようだ。
1番出口は今まで勇者として旅してきた異世界、テラステラへと繋がっている。
2番出口は……日本? こっちから出れば、元の世界に帰れるってことか?
日本での俺は死んでいたはずだが、わざわざ選択肢が用意されているということは、もしかしたら……
「……」
帰れる……?
「………………」
いや、俺が行くべき道は既に決まっている。
魔王も倒さず、トルカとフィンも救えずに投げ出すなんて、できるものか!
劣等生のままで、あいつに負けたままで終わってたまるか!!!
1番出口側の階段を駆け上がり、改札の体を成していない改札を抜け、出口に向かって走り続ける。
「おい、クソ兄貴」
唐突に後方から聞こえてきた少女の声に、俺は思わず立ち止まる。
その声は俺の妹、優佳のものであったからだ。
振り返ろうとして、トレンチコートの男性の言葉を思い出す。
俺は優佳の声を無視して、再び走り出した。
「待てよクソ兄貴、どこ行くんだよ!」
この声を聞いちゃいけない。
「お父さんもお母さんも、皆待ってるんだよ!」
聞いちゃいけない!
「進、お願い……戻ってきて……」
お袋の声。
「進也……頼む、戻ってきてくれ……」
親父の声。
俺は走った。
次第に暗くなる構内を、出口に向かって、ただただ走り続けた。
絶え間無く聞こえてくる家族の叫びを無視し続けるのは、辛かった。
真っ暗で何も見えないはずの視界が滲んだ。
それでも、俺は走るのをやめなかった。
「進……」
「進也……」
「クソ兄貴…………お兄……ちゃん……」
振り返るな!
振り返るな!!
振り返ればきっと、全てが無駄になる!!
「!」
見えてきた光に向かって、俺は手を伸ばした。
美多原町で暮らしていた普通の高校生の萩進也はもういない!
今の俺は、テラステラに生きる勇者……シンヤ・ハギだ!
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