もしかして、本当に・・・
「おはようございます」
「おはようございまーす」
「あれ、なんだよ、佐伯と香川さんが二人で仲良く出社?
何々?昨日何かあったわけ?」
「もう、からかわないでくださいよ袴田さん。さっき電車で一緒になったんですー」
「何だよ。つまんないなー。ま、佐伯と香川さんじゃ釣り合い取れないもんな」
「余計なお世話だよっ!」
同期の袴田はいつもこんな感じだ。俺をからかうのが日常茶飯事。
「あ、佐伯。何か昨日お前に荷物届いてたぞ」
「俺に?なんだろう」
袴田から手渡された箱を見る。送り状の品名にはハンカチと書かれていた。
「あー。主任の結婚式の引き出物だ。俺、会社宛てにしてたんだっけ」
箱を開けると、中からはバーバリーの赤いハンカチが出てきた。
タグを切ってポケットに滑り込ませる。
こういうのはすぐに使わないとずっと使わない。
「あ、佐伯、引き出物ハンカチにしたんだ。良いなバーバリー。
俺もそれにすりゃ良かった」
「袴田は何にしたんだ?」
「嫁に頼まれて、何かの皿」
そんな会話をしている内に、始業の時間になった。
仕事は殊の外上手く流れた。いや、上手く流れ過ぎだ。
いつもならクレームの一つや二つ入って、何故か俺の電話口にそれが回ってきて、
数分間平謝りし続ける謎の時間が発生するはずなのに、
今日は社内もやけに静かだった。
そればかりか、今日の俺はノリに乗っているのか、
丸一日掛かりそうな報告書もお昼までには出来上がり、
後は明日あるプレゼンの準備をノンビリとするだけで終わりそうな勢いだ。
なんだ?今日は?一体何が・・・。
ふと、朝のテレビの占いを思い出す。
「今日一番運勢が良いのは5月産まれのあなたです!」
いやいや、たかがテレビの占い如きで、こんなにラッキーが続くワケ・・・。
「今日のラッキーナンバーは21、ラッキーカラーは赤です!」
赤。赤いハンカチ。いや、まさか。
ランチの時間、いつも通り袴田を伴って近所の定食屋へと向かおうとすると。
「あ、佐伯くん、袴田さん、ご飯ですか?私も一緒に行きます!」
香川さんがそういって駆け付けてきた。袴田が余計だが、嬉しい事に変わりはない。
「二人はいつも何食べてるんですか?」
「ここの定食屋が多いかな?安いし美味しいから」
袴田が香川さんにそう説明している。
俺は一歩下がったところでさっきから気になっていた
今日の占いをネットで検索していた。
ラッキーアイテムは・・・ハンカチ。
「おいおい、嘘だろ」
思わず声を漏らしてしまった。
「ん?佐伯どったの?」
実は、今日ラッキーな事が沢山あってもしかしたらと思って調べてたんだー!
なんて、袴田に言ったら最後。
お前今日ラッキーなんだから奢れだのなんだの言われかねない。
何とかごまかさなくては。
「いや、好きなF1のチームが最下位でさ」
「あー、佐伯そういうの好きだったっけ」
F1とか微塵も興味がないのだが、偶々ネットの広告が目に入り咄嗟に口から出た。
袴田は特に怪しむこともなく納得してくれたみたいだ。
3人でランチを共にし、会社へと戻ってきた。
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