Happiness

満月 兎の助

Happiness

ウェディング

 



 ──きっとあたしは、世界で一番幸せな花嫁。





※※※


 夢みたい。

 あなたとこうして腕を組んで、バージンロードを歩いているなんて……。


 上目遣いに隣を見上げると彼は目を細め、いつものようにちょっと間の抜けたような微笑を返してくれる。

 参列してくれる人が居なくたって、お金が無くてあたしの手縫いのドレスとタキシードだって、二人で結婚式が挙げられるなら幸せ。


 牧師パストーレ様はいらっしゃらないから、二人で愛の言葉と誓いのキスを交わそう。


 学生の時から『好きだよ』とは言ってくれたけど、それ以上の愛の言葉はない。

 一度だけ、あたしはそれを不信に思ってしまった。


『どうして言ってくれないの。ホントはそこまでの気持ちがないから、言えないんじゃないの?』


 でも彼はまた微笑んで


『……その言葉は君の中にきっと強く残るから。こんな時代だから、それは軽々しく言えないよ』


 そしてあたしのおでこをつついた。

 

 でもそんなの、納得できるわけない。


『だったらいつなら言ってくれる? どうしても聞きたいの』

『もちろん言うさ。結婚式の時に』


 ……それが、プロポーズの言葉になった。




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