これから
[佐藤悠基&薫子]
「あたし、あんたのこと、好きなんだけど」
「……え?」
「だーかーらー、あんたのこと、好きだって言ってんの」
「……え?」
「何回も同じこと言わせんじゃないわよ」
「……そんな事、急に言われても……困るって言うか……」
「まぁ、それもそうか」
「うん……」
『…………』
「で?」
「えっ?」
「だから、返事は?」
「あっ、え、っと……」
「待っててあげるから」
「僕は……」
「僕は?」
「僕には……人を好きになるとか、分からないんだ」
「……」
「だから、ごめん。何も、言えない」
「あっそ。じゃあどうしようかなぁー」
「……」
「あ、ならさ、私も文芸部に入れてよ」
「えっ?」
「あたしが人を好きになるってこと、つまり、恋を教えてやんよ」
「えぇぇ……」
「何その顔……」
「いや、別に……」
「問題ないわよね?」
「まぁ……」
「じゃ、そういう事だから。明日からよろしくー」
「あ、え、うん……」
薫子は嵐のように現れ、そして去っていった。
[薫子]
あたしだって緊張してないわけがない。
こんな軽い性格だけど、女の子だから。
今も心臓がばくばくで、胸が張り裂けそうで。
ちゃんとした告白ができなかった後悔と、悠のだらしない返答に対するいらいらで頭がいっぱいだった。
好き。
ずっと胸に秘めていたはずなのに、どうして言っちゃったんだろう……
でも、言っちゃったものは仕方がない。
ぐいぐい、行くしかない。
[佐藤悠基]
なんだったんだ今のは……
夢……じゃないよな……
薫子とは幼稚園からの幼馴染。
家が近く、その影響でよく遊んでいた。
話さなくなったのは中学校に入ってから。
薫子はイメチェン?をした。
僕なんかと違う世界で生きていた。
だから……
いきなりあんなこと言われたって、驚くに決まっている。
そんなことは絶対にないって、思っていたから……
[石川実里]
私、聞いちゃいけない事聞いてしまったのでは……?
薫子……?さんが佐藤くんに、すき、って……
………………
わたし、は……
このままじゃ、だめ。
私は、このままじゃだめだ。
佐藤くんは告白を受け入れていなかった。
まだ、チャンスはあるんだ。
私はこの恋を無駄にはしたくない!
絶対に!諦めるもんか!
[佐藤悠基&石川実里&清水柊&伊藤薫子]
「えー……今日から新しい部員が増えます」
「伊藤薫子、です。よろしくー」
「よろしくお願いします」
「よろしく……お願いします……」
「……部員も増えたので、自己紹介でもしますか?」
「さんせー」
「賛成です」
「賛成……です……」
「なら僕から。えー、僕の名前は佐藤悠基、です。2年生です。一応文芸部の部長、させてもらってます。ずっと1人の部活だったのに急に人が増えて困ってはいる反面、嬉しいと思う気持ちもあります。よろしくお願いします」
「次は、私ね。私の名前は石川実里、と言います。同じく2年生です。図書室でよく本を読んでいたので、どうせなら文芸部に入ろうと思って、入部しました。よろしくお願いします」
「次は、私です。私の……名前は……清水、柊、と言います……。1年生……です。ずっと入ろうか……悩んでて……この度……入部しました……。喋るのが……遅いですが……よろしく……お願いします……。」
「最後はあたしね。さっき言った通り、あたしの名前は伊藤薫子。2年生ね。ワケあってこの部に入部することになったわ。一応生徒会にも入ってるから毎日来れるかどうかはわからないけど、よろしくね」
「えー、そんなこんなでこの4人で文芸部、やっていきます。2年生が3人なので、来年で引退ですが、楽しくやっていきましょう。」
『おー!』
「えーっと?悠と?実里と?柊?ね。よろしくー」
「あっ……名前呼び……」
「えっ?なんかまずかった?実里って呼ばない方がいい?」
「い、いえ、大丈夫。名前呼び、してなかったなって思って」
「良い機会だし、名前呼びしたら?」
「そうね……薫子ちゃん、と、柊ちゃん、と、ゆー、き、くん……」
「ほら、柊も」
「わたし、は……えっ、と……薫子先輩……実里先輩……悠基、先輩……」
「悠は?」
「僕も?えーっと、薫子、実里さん?柊さん?」
「んー仲良くなった感じがするわね!」
「次の親睦会は薫子も参加でいい?」
「何?親睦会って」
「石……実里、さんが皆で仲良くなろうって提案してて」
「ふーん……いいわね、あたしも参加するわ」
「実里さんと柊さんもいい?」
「大丈夫、だよ」
「大丈夫……です」
「わかった。予定としては次の週末で。詳しい内容はLANEで連絡するね」
『はーい』
[石川実里]
ライバルは2人。
でも、今注目すべきは柊ちゃんじゃない。
薫子ちゃんだ。
あの時の告白を聞いてしまった以上、敵として見るしかない。
私は、諦めない。
佐……悠基くんのこと、大好きだからっ!
[清水柊]
にぎやかになった。
私はにぎやかなところが苦手だったはず。
なのに、平気。
佐……悠基先輩のそばにいると安心する。
だから、悠基先輩のそばにいれればいい。
……胸のもやもやの正体はまだ分からないけれど。
[伊藤薫子]
今1番の敵は実里か。
悠を見る実里の目を見ればすぐにわかった。
それでも。
あたしには関係ない。
あたしはただ、まっすぐ気持ちを伝えるだけ。
それがあたしのいいところだから。
……そう、言われたから。
[佐藤悠基]
部員が増えたのは嬉しい。
けど……
みんな女の子だからちょっと……
大変な毎日が始まりそうだ……
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