第200話勇者

「へ、ヘルト様、そろそろ次の街にご出発なされてはいかがでしょうか」


 金色の瞳を持つ青髪の美少女、セルトが俺に話しかけてきた。怖がりながらも、3人の女達とベッドで乳繰り合っている最中にいつもいつも邪魔をしてくる。妹とはいえ、うざい事この上ねぇ。


「いちいちそういうこと言ってくんじゃねえよ。萎えるじゃねぇか」


 目の前では俺の、つまり勇者一行の魔術師を務めているウェネーが嬌声を上げながら腰を動かしている。それを羨ましそうに眺めていた剣士のエリミスと治癒師のアリーネにもかまってやると、嬉しそうな声で2人も喘ぐ。そんな俺たちを眺める荷物持ちのセルトの瞳には怯えの感情しか宿っていない。まだ勇者に選ばれる前、初めて犯した時はもっと感情豊かで随分と楽しませてもらったが、今ではその瞳に写る俺は単なる化け物か。


 そんなセルトを犯す度にゾクゾクとした仄暗い喜びが心の奥から湧いてくる。


「で、でも……」


「うるせえな。また殴られてぇのか?」


 その言葉で、瞳の奥から一層恐怖が現れる。それを見て、俺は思わず笑みを溢す。


「どけ」


 腹の上で腰を振っていたウェネーがブツブツと文句を言うが、俺はそれを無視してベッドから降りると、セルトに近寄る。


「ひっ!」


 小さく叫ぶ馬鹿な妹の口を右手で鷲掴み、持ち上げる。苦しいのか俺の手を必死に外そうとするが何の意味もねぇ。


「歯ぁ食いしばれよ」


 俺は空いている左手を握りしめる。それに気づいて、こいつの目から光が失われていく。そんなセルトを見て思わず舌舐めずりをしながら、死なない程度に俺は腹を殴る。


「ぐぇっ」


 綺麗な顔が歪み、くぐもった汚え声が喉奥から漏れてくる。それを聞く度に、一層興奮する。セルトの悲痛な声は他の女達とヤるよりも何倍も俺を昂らせてくれる。だから何度も何度も腹を殴る。手に吐瀉物が掛かろうと、それが顔まで飛んでこようと、こいつが糞尿垂れ流そうと、血を吹き出そうと、何度も何度も俺はセルトを殴り続け、いつものように、達したところで手を離した。


 俺達の情事を見ていた後ろの3人がクスクスと笑っているのが聞こえてくる。セルトは自分で出した汚らしいゲロと小便と大便の混ぜ合わせたものの中に倒れ込み、体をピクピクと震わせている。その彼女の頭を踏みつけて、存分に味わわせてやる。


「おい、アリーネ。治しておけ」


 ついでに催してきたのでセルトに小便をかける。その惨めな様を見て俺はまた興奮する。


「えー、ばっちいから触りたくなーい」


 酷く嫌そうな顔を浮かべるも、アリーネは俺の指示に従い、すぐに治療を始める。それを横目に、俺は服を着る。


「えー、もう終わり?」


「もっと遊ぼうよー」


 甘えた声を出してくるウェネーとエリミスに目を向けず、その代わりに部屋の床に無造作に放り投げていた神剣マタルデオスとやらに手を伸ばす。この剣を引き抜いたのが全ての始まりだった。1週間前の剣を抜いた日、俺は初めてセルトを凌辱し、絶望している彼女を無理矢理連れ出して、俺の部族が属しているメザル共和国の首都であるガレリに向かい、そのまま勇者となった。それから3人の仲間を得て今に至るというわけだ。


 人を救うなんて全く興味ねぇ俺が、まさか勇者に選ばれるとは思ってもみなかったが、女とヤれたり、美味い飯が食えたり、豪華な宿に泊まれたりと、いろんな恩恵があるから勇者も悪くはねぇ。


「セルトの言う通り、この街に長いしすぎると周りがうぜえからな。そろそろ出発するぞ」


「でもまだこの子の治療1時間くらいかかるよ?」


「その間に飯でも食ってくるよ」


「ちょっと待って、アタシも行く!」


「私も!」


「えー、ずるーい!」


 俺の言葉にウェネーとエリミスが慌てて服を着始める。アリーネは不満そうに頬を膨らめるがセルトの治療を続けている。


「じゃあ、戻ってくるまでに終わらせておけよ」


 不平を言うアリーネにそう言うと、俺はマタルデオスを腰に装備してウェネーとエリミスを引き連れて部屋を出た。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『今回の勇者は随分と勇者っぽくないね。どう見てもあれは悪寄りでしょ?』


『ええ、でもジン君っていう、いつもの勇者の役割をしてくれる子が既にいるのなら、新しい勇者は変わった子にした方が面白いでしょう? いつもみたいに生真面目な子を選んだら、ジン君が活躍する前に四魔と戦っちゃうかもしれないじゃない』


『んー。まあそうだけどさ』


 勇者というにはあまりにも人格が崩壊している青年をフィリアは楽しそうに見つめていた。秘められた力は途轍もないほど巨大で、そんな男がさらに神剣すらも手に入れている。これで勇者の装備や遺物全てを手に入れた暁には、一体どれほどの存在になるのか、想像もつかない。


『勇者のつもりが魔王になりました、なんてことも十分にあり得そうだね』


『そうね。でもそうなったらそうなったで面白そうね』


 そんな無責任な発言に思わずラグナは笑ってしまった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ねえねえ。これからどこ行くつもりなの?」


 ウェネーの質問に俺は顎の無精髭を触りながら思案する。


「んー。確か勇者は強くなるために装備を集めなきゃいけないんだよな」


「うん。どこの国かは知ってる?」


「さあ?」


「もう、議会のおじさん達が色々説明してたでしょ」


 議事堂に集められた時の事を思い出す。うざってぇ族長以外にも色んな偉そうな奴らが集まって、俺を物珍しそうに眺めていやがった。


「ああ、そういやなんか言ってたな」


 だが俺はだるい話の間ずっと寝ていたのでほとんど聞いていない。代わりに聞いていたのはセルトのはずだ。


「セルトが知っているはずだから、あいつに聞くとするか」


 先程の事を思い出して、また舌舐めずりをする。俺があいつに抱く感情はある種の恋に近い。自分でも歪だとは思うが、いつからかあいつに劣情を抱き、犯したいと願うようになっていた。夢が叶って本当によかった。


 惜しむらくはあいつの婚約者の前でヤれなかった事か。その前にセルトの目の前で殺しちまったのだけは失敗だった。まあ、あいつにあの野郎が手を出そうとしていた時点で我慢できなくなっちまったから仕方ねぇ。神剣の最初の犠牲者が妹の婚約者だとか笑えるぜ。泣き叫ぶセルトをあの男の死体の前でヤッた時の興奮はいまだに忘れられねぇがな。


「さてと、戻るか」


「うん!」「ええ」


 ウェネーとエリミスが揃って頷く。こいつらは旅に出る時に紹介されたこの国で有能な冒険者達だ。議会のジジイどもが言ってた通り、確かに有能だ。性格も俺と似ていてどこか破綻している所があり、嫌いじゃない。


 部屋に戻ると置いていかれて不貞腐れたアリーネと、治療を受けたが気絶したまま汚物の中で顔を埋めているセルトの姿があった。それを見て興奮した俺は食後の運動をすることに決めた。


「お前ら外出てろ」


「えー」「そんなー」「私も一緒がいいー」


 3人がブツブツと文句を言うが俺は無視する。そんな俺を見て理解したのか、3人は仕方無く出て行った。そうして部屋の中には俺とセルトだけが残された。セルトの出した汚物の異臭はするが、愛する妹だ。それすらも受け入れる事が出来る。まず俺は服を脱ぐと、セルトを殴り、起こす。


「う……ん」


「目ぇ覚めたか」


「え……ひっ!」


 今から何をされるのかを理解したセルトが恐怖に顔を歪める。そんな妹を見て、俺は舌舐めずりをすると、髪を掴んで強引にベッドに引っ張っていった。後から聞いたら、それからしばらくの間、セルトの泣き叫ぶ声が宿屋中に響いたそうだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜


「それじゃあセルト、一番近い国はどこだ?」


「は、はい。ここからだとキール神聖王国が一番近いそうです」


「ならそこに行くか」


 俺たちは当然のように金を支払わずに宿を出る。セルトはそれに気がついて慌てるが、結局俺に従ってついてくる。


「ちょっ、ちょっとお客さん! 宿賃をまだ貰っていません!」


 慌てた宿屋の主人が出てくる。


「あ? 宿賃?」


「あんた、あんだけ飲み食いして、うちの一番上等な部屋に泊まったっていうのに逃げるつもりじゃないよな」


 主人は筋骨隆々で、何で宿屋をやっているのか分からない見た目をしていた。そんな男がバキバキと指を鳴らしながら凄んできたのだ。中々に迫力がある。


「宿なんてどこにあるんだよ?」


「何を言って……」


 そんな主人の目の前で、俺は巨大な炎弾を一つ放つ。瞬く間に宿屋は燃えていき、中から次々と悲鳴が聞こえてくる。


「な!? カ、カリア! テル!」


 主人は火傷も気にせず宿屋に戻っていった。多分嫁とガキを助けに行ったんだろう。俺はそんな主人を鼻で笑い、もう一発炎弾を宿屋の入り口に向けて放つと、セルトと3人を引き連れて、キール神聖王国の首都オリジンに向かって歩き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る