一区切り 9

 最近サエとは穏やかなセックスになっている。同じ布団で寝てその日の気持ちでキスだけの日もある。今度の日曜日に動物園にユイを連れて行って、その後食事をしようと約束した。ここ3日とくにボンの店は目立ったことは起こらず、従業員も板長を除いて戻ってきた。それでもフミコは常連には人気で子供をベビーシッターに預けて夕方からカウンターに立つ。

 サエの店は常連の男女の人形のような子が入った。元々自分で服を作っていたらしく腕がいいようだ。今日は作業台を一台増やすので私も直行で手伝いに入っている。最近は作業がサエだけではこなせないようになっている。彼女は自分で服も作るので修繕はすべて任すようだ。ちょうど宅配で大きな袋が届く。

「カオルさんところの衣装の修繕を受けている。新着の衣装の依頼も3着来てるの」

 その時電話が鳴ってサエが出る。頷いて私に受話器を渡す。

「事務所に入れたらここだと。頭取から横浜のやくざの逮捕された組長の弟が大阪に入っていて、どうも修司の持っているものと交換を申し出ているのよ?あの黒サングラスを殺す計画をしたのは彼だそうよ。あの探偵に調査は依頼した。それで心配で」

「とくに動きはないがなあ」

「頭取から総理への約束の資金を私が引き渡した。向こうは編集長が来ていたわ。一度電話を入れてくれと言ってた」

 さっそく伝えられた電話に入れる。

「やあ、これで総理への約束は果たしたことになるが、問題は反対派閥が君の持ち物に注目している。何か動きが出るのか心配だよ」

 外に出ると路地を抜け公園に出る。もう人夫出しは終わっていて労働者の姿も少なくなっている。いつも姉貴が乗っているトラックの姿もない。ここから事務所が見える。私の横にブラックのワゴンカーが目に入る。急に目の前が真っ暗になる。ソファーに押し付けられ腹に強烈なボディブローを受けてそのまま気が失われていく。








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