新しい道 4
戸棚のスーツにネクタイを締めて言われたホテルに着く。すると待ってたように銀行員らしい2人が挟むようにエレベーターに乗る。一人がエレベータの前で見張りをして、もう一人が個室に案内する。ドアが開くと私だけを中に入れる。
「久しぶりだね。新堂君」
白髪で頭取より10歳ほど上に見える。横に40歳ほどの婦人が座っている。
「第1総務課長だよ。憶えていないかね?」
「記憶にありません」
「単刀直入に話をするが、我が行は大蔵省から合併を求められている。今回の調査は君のメモで行われた。あのメモは伊藤絡みの債権ばかりではなく、君なりに将来危険な債権も選んでいた。見事に8割が今不良債権になっている」
「『白薔薇』のママとは?」
「私もママと寝た仲じゃ。ここにいる課長にはばれているわ。そういう意味では君とも兄弟だな。ママは私に君も含めて保護を申し入れてきた。私は我が行を救ってくれと泣きついた」
「でも私にできることはあるでしょうか?」
「私は頭取の傍にいたから君のメモを見て想像がついた。ママから君のUSBも預かっている」
「頭取も同じものを?」
「あれにはほとんど肝心な内容が抜かされている」
「ママが?」
「彼女は頭がいい。君が彼女の部屋で見たUSBは頭取に渡したものだそうだ。こちらには5倍もの情報が入っている。それを早急に大阪支店で見てもらいたいのじゃよ。記憶ではなくて君の脳で見えるものを教えてほしいんだ」
「そんなことができるでしょうか?」
「君は今何も学ばずに貸付をしているだろう?脳がしっかり記憶を持っているのじゃ。ママは昔通りに自分を抱いてくれていると言ってた。しばらく第1課長を大阪支店に置いてゆくから頼む」
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