戸惑い 8

 サエは子供の世話でまったく相手にしてくれない。それに飲み屋に行っても本人とは知らず妹を孕ませた噂が飛び交っている。ここまで悪者にされては飲んでいても気分が悪い。夜中に妹の体を縄で縛って入れたと言う話がまことしやかに伝えられている。そこまで勝手に話をでっち上げるなと暖簾を出る。

「ホテルで飲まない?」

 流し目の女アヤだ。腕を抱えてそのまま路地の奥のホテルに入る。今日は思いっきり抱きたい気持だ。

「SM顔負けの噂で持ちきりよ。考えただけでおつゆが湧いてきそう」

 鮮やかに素っ裸になって酒を手渡す。

「針で入院してたのじゃないのか?」

「先生が言ってたのね?後は少し残っているけど腫れは引いた。私って撮影でも本気になってしまうの。相手もその気で太いので背中を縫われて」

「痛くないのか?」

「痛い時がいいのよ」

と言いながら抱き合うようにして中に入れる。

「あんた何かしたの?」

「どうして?」

「知り合いの刑事があんたのスーツ着た写真を見せた。何度か逮捕された仲だから気安いの。何度も抱かせてあげたしね」

「まさか言わなかっただろうな?」

「男を売らないよ。どうも東京の大きな事件の証人だって言ってたよ」

 もう体を激しく揺すり出して話にならない。










 

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