鏡の向こう 2

 八重洲口に先に出ていた年配のマネージャーが車で迎えに来ていた。周りの目が興味ありげに二人の姉妹を見つめている。ゆっくりドアが開いて驚いた目でマネージャーが二人を見比べて、

「新宿のマンションはあの時のままです。部屋には頭取から見張りが張り付いていてくれます」

「新宿に住んでいたのか?」

「そう、覚えてないのね。私と会うために新宿に2年前に引っ越ししてもらった。今回修司が消えてからこの部屋は伊藤と頭取双方から家探しされた。でも何も見つからなかった」

「それでもママは今まで家賃を払い続けてきています」

 マネージャがバックミラーを見ながら言葉を添える。車は混雑に巻き込まれることもなく新宿の裏町に止まる。さっそく入口に黒づくめの男が立当ている。エレベーターを二人で登ると止まった階にあのサングラスの関東のやくざが立っている。思わず体が引ける。男は私とは分かっていないようだ。そっとドアを開ける。

「彼は伊藤の?」

「関東のやくざは今は頭取側についている。何度も襲われたようね」

 殺風景な部屋に大きすぎる机がある。

「これはね。専務から頭取になった時に修司が譲られたものなの。ここで執務をとっていた。それだけ修司は可愛がられていた。それが頭取になると守りに入った。猜疑心が強くなったわね。私もここに泊まって除夜の鐘を聞いたこともあるのよ」

 机を触っているとふと本棚を少し押してみた。そこに『カオル修司』という傷跡があった。

「これが記念碑よ」

 指先だけに記憶が戻ってきたような気がした。






 

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