背中が見える 5

 今朝酷い目にあった。カノンとの激しい交渉で蒲団に潜ると意識を失ってしまった。声を上げる余裕もなく蒲団に潜ってきたサエの頭突きをあごに受けた。髭を剃ってもらい頭も七三に分けて整髪したことを私自身忘れていたし、彼女はてっきり強姦魔に見えたようである。

 それで慌ててカノンから貰った髭面の写真を見せる。

「ごめん!その写真どこで手に入れた?」

「小頭に貰った」

「でも何だか別人に見える」

 私は念のためガラス入りの黒縁メガネを買った。

 下の喫茶店に入るとボンとフミコが並んで俯いて座っている。私の変化にもあまり反応がない。サエがフミコの耳元で何か囁いている。フミコの顔が真っ赤になっている。ボンが庇うようにフミコの肩を抱えて出ていく。

「何を言ったんだ?」

「イサムって鈍感ね。昨日ホテルに泊まったのよ。ボン、ホテルの仕組みを聞いていたもの。ボンのあれって大きいのよ。だから大きかったでしょ?って聞いたの」

「なぜサエにボンのあれが大きいと分かるんだ?」

「女将の店を辞める時、彼の部屋でフェラしてあげたの。でも口の中に入れて1分も持たなかった」

 無意識にサエの腕をつねっていた。

「嬉しい!妬いてくれた」

「今日は早く帰ってこいよ」

「急ぎの仕事があるの。事務所終わったら夕食を一緒にしましょう。でもそのメガネ賢く見えるよ」








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