過去のこと 1

 親分が番頭と会って話をつけたらしい。会計と貸し付けから外して、空港建設の現場の飯場の管理に泊まり込みで入ったようだ。給料から使い込みに対して返済することになったらしい。新しい返済のページを作ったが70歳になっても終わりそうにない。

 集金は今回から姉さんと回ることになった。

「親分も甘いわ」

 昼ご飯に入った喫茶店で口を尖らせて言う。

「親分も辛いんだよ」

「それよりイサム何かしたの?カラオケバーでイサムの写真見せられたよ。髭のないやつ」

「ああ、聞いた。関東のやくざらしいね。サエが言うのには車ではねたやつらしい。だが記憶に全くない」

「しばらく私がついて回る。私の方が力強いからね」

「危険だよ」

「サエちゃん私の話していない?」

「いや」

「なんか悲しいわ。私男には全く興味ないの。こんな話イサムだからできるのよ。あんたは中性のような変な感じよ。中学の頃好きな子ができて一時は駆け落ちしたのよ」

「それも女の子?」

「サエちゃんによく似ている。3年間家出して同棲した。二人で結婚を誓っていた。今の親分は父ではないの。母が

後添えに入ったの。父のことは覚えてもいない。親分が頼まれてスナックに勤めていた私を見つけ出した。大柄だったので20歳には見えたようよ」

「親分彼女を認めてくれた。それで二人のアパートを借りてくれた。でも彼女が男と姿を消した。それで親分の仕事を手伝うことに」

「お母さんは?」

「2年前に病気で亡くなった」







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