朱雀、翔ぶ。
吾妻栄子
第一章:琥珀の黒鳳蝶
「父上はなぜ狩りに連れていって下さらないのかしら」
窓辺の
その向こうに広がる水色の冬空を仰いで
当年十六歳、この大国の皇帝唯一の娘である。
「この寒さですし、姫様がお怪我などなさるといけませんから」
年配の女官が温かな茶を器に注ぎながら答えた。
穏やかだが譲らない声だ。
「それは、父上も同じではないかしら」
甘やかな香りを含む湯気が漂い過ぎる中、公主は切れ長い瞳の長い睫毛を伏せた。
白玉じみた滑らかな手が翡翠の首飾りの先の小さな
磨き上げられた黄金色の玉に閉じ込められた蝶は艶やかな
だが、決してもう翔ぶことはない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます