第46話 臨時製作委員会な日常

 ここは渋谷のマンションの屋根裏部屋。

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。」

 栞が新年の挨拶をする。日本らしく着物姿でいいだろう。

「栞お姉ちゃん!? 新春の挨拶は、もう終わっているよ!?」

 妹の谷子が姉の栞をたしなめる。

「そうでした。」

 栞は開き直りが早い。

「実は、このお話を45話まで書いて放置していました。そして、本シリーズの2を書いていたのです!」

 栞はカミングアウトをする。しかも長いタイトルなので良い略が思いつかない始末である。

「もうシリーズを書いた方が、一から考えなくていいし、忙しい社会人には無理。書けなくなっちゃうから。話が進まないしね。」

 谷子の言う通りである。

「さらに、本シリーズの3も書き始めたのです!」

 栞は思いついたものを書いてみた。別々に書くと初期設定で大変なので、キャラクター設定だけでも省くために本シリーズものにした。

「だって大変なんだもの。」

「気持ちは分かるよ。栞お姉ちゃん。」

「分かってくれるのね。ありがとう。カワイイ怪獣ちゃん。」

 素晴らしき渋井姉妹の姉妹愛。

「長い! オープニングトークが長い!」

「お茶が冷めてしまいますわ。」

「お邪魔します。」

 栞と同じく魔法少女の3人が現れた。

「ゲッ!? 泪!? 結!? リヤロド!? どこから入って来たのよ!?」

「そんなことはどうでもいいのよ!」

 いつの間にか、魔法少女は4人に増えていた。

「いらっしゃいませ。」

「これはご丁寧に、ありがとうございます。」

 谷子は礼儀正しく挨拶をする。挨拶をされて畏まる魔法少女たち。

「まだ、泪と結はわかるわよ!? なんで恵比寿高校のリヤロドまでいるのよ!?」

「ごめんなさい。帰ります。」

「いいのよ!? いても!? 大丈夫よ!? 泣かないで!?」

「お姉ちゃん! いじめはやめて!」

「すいません。」

 こうして他校のリヤロドも仲間に加わった。

「あの、私にも女子高生ネームを下さい。」

 まだ魔法少女リヤロドには、女子高生の名前がなかった。

「恵にしよう! 恵比寿高校だし分かりやすい! これが本当の即断即決よ!」

 さすが栞。トップダウンで判断が明確で早い。

「やったー! 私の名前は、渋井恵。エヘッ。」

 いつの間にか、魔法少女の名字は全て、渋井で統一されている。

「なんか渋井さん量産工場ね。」

 現れれば5人目の魔法少女の名字も、もちろん渋井である。

「ここ私の家。エヘッ。」

 だって渋井さんの屋根裏部屋だから。恵は笑って喜んだ。

「本題だけど、本2で剣道、本3で鉄道。色々なシチュエーションを試しているけど、問題はここ。本1をどうするかよ。」

「うう~ん。悩む。」

 このままではグダグダした日常になってしまっている。

「長生きアニメって、グダグダした日常モノでしょ。今のままの魔法少女のグダグダした日常でいいんじゃない。」

「そうそう。」

 サザエさんん、ちびまる子ちゃんん、クレヨンしんちゃんんなんかはそうだ。

「今更、魔王が現れて、世界を魔王から救うために魔法少女が現れる。なんてバカなストーリーはないでしょう。」

「マジか!?」

 異世界ファンタジー作品になってしまう。

「それだ! 魔法少女が現れたのは悪い魔王が現れたからにして、ちょっと戦闘の合間に日常をダラダラ暮らしているとしておこう。それならストーリー性がある。」

 コナンンの黒の組織みたいなもんだな。

「もう尺もないし、とりあえず、良いことをしてみよう。きっと道は開かれるはず。」

 本当はドラえもんんや、アンパンマンンのようなテンプレ型で毎回同じことの繰り返しで、長く生き続けられる作品がいい。下手にストーリーがあると、その盛り上がったストーリーの後は終わるだけなのよね。コナンンは最初のストーリーの黒の組織を終わらせないで引き延ばして生き残っている。


つづく。

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