第33話 お正月はどこへ
ここは渋谷のマンションの屋根裏部屋。
「まだ二日の夜なんだけど、全然、正月らしくない。普通の生活なんだけど。」
「おせちも死語。お餅も死語。お年玉も死語ですね。ワン。」
「それより総合小説コンテストやってるのに、ゲームと恋愛の小説コンテストが始まって、忙し過ぎて、お正月休みが取れないんですけど。ニャア。」
お正月の休みなど休暇にならない。
「良いことをするって難しいのね。」
「探偵モノもそうですよ。不幸を巻き散らかし事件が起きなければ、解決する探偵は活躍できないんですから。ワン。」
「誰かが困っていないと、良いことって、できないですよね。」
その通り。誰かの不幸が必要になるので矛盾している。
「そうね。私が良いことをするために、悪役を作りましょう!」
「出た! エルメス様の18番! 迷惑な思いつき! ワン。」
「悪役はドキ子さんでいいんじゃないですか? ニャア。
その手があったか! でも何かが違う気がする。
「でも魔法少女の私が作品の方向性を考えていることも変よね。」
「悩み考え事キャラ、薄皮ヨモギを谷子さんのクラスメートとして登場させるという奥の手もありますよ。ワン。」
「あ! そうだ。谷子さんは、ほんのおねえさんなんですから、本を執筆する、将来は歳をとってアイドルが難しくなったら小説家になってもらいましょう。ニャア。」
これだけでも選択肢が多数ある。正解は1つなのか、全て正解なのか、全て間違いなのか。それは自分がやってみないと分からない。
「つながった!!!」
その時、栞は大声で発狂した。
「正体不明の異世界ファンタジーに居そうな私の正体は、怪獣ちゃんが書いた処女作、「銀河系最強の魔法少女エルメスお姉さん」にしよう!」
「お姉さんはいらないと思います。ワン。」
「全話のみなみちゃんから悩み続けた私たちに、ネ申からの贈り物ですね。ニャア。」
これが構想というものである。
「なんだか伏線をはりまくりね。」
「打ち上げただけですからね。ワン。」
「放置とも言いますよ。ニャア。」
一つ構想がつながる度に、放置の伏線が新しく5本はできる。恐ろしい。
「よし! 魔法少女モノらしくなってきたわね!」
「なってません。ワン。」
「ほんのおねえさんと魔法少女がカオスしてます。ニャア。」
ケーリーとバーキンと視聴者の言うことは正しい。
「たわけい! 私がつながったと言ったらつながったんだ! 自衛隊に電話してルイヴィトンを読んで来い! 敵は魔法少女3号4号にしよう! 怪獣ちゃんには私が魔法をかけて本を書かせる! これで史上最強の渋谷の暴動! いや、違った。史上最強のエンターテイメント! 2020年エルメス様降臨祭は決まったも同然だ! ワッハッハー! 中国人に私のフィギュアを売りまくるぞ! ワッハッハー!」
「エルメス様が壊れた。ワン。」
「でも結局、魔法で実現させるんだからすごい。ニャア。」
ちなみに日本のアニメのフィギュアは1体50万くらいで売れるらしい。
「欲しがりません! 勝つまでは! キャッハッハ!」
「どうしよう!? 完全にエルメス様が壊れてる!?」
「大丈夫、私に任せて。エルメス様、かわいい谷子さんのプロマイド写真ですよ。」
「なに!? 私にちょうだい!」
壊れたエルメスは正常に戻り、バーキンから谷子のプロマイド写真を奪い取り、抱きしめてキスしている。
「かわいい私の怪獣ちゃん。エヘッ。」
「まだこっちの方がマシかな。ワン。」
「見慣れているからね。ニャア。」
お正月と冬休みは物語の構想を練るためにあるんだね。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。