Drift15 遅起

 んお、もう朝……じゃなくて昼か。まだカイトもヴェインも寝てるなぁ。

 そりゃそうかあの後しこたま飲んで食ってして寝たのは明け方近かった筈だ。それにしたって久々によく飲んだぜ。誰かと飲むってのも悪くねぇ。まぁ相手は選ぶがな。初日の大男みたいなのとは飲んでもシラケるだけだ。

「あー風呂入ろ。てか飲みに行く前に入っとけば良かったな……」

 とりあえず風呂場に行ってローブを脱ぐ。このローブ、魔術と名がついているせいか汚れやらなんやらがすぐに消えるスグレモノだ。適当な所に引っ掛けて風呂に入り、バスタブに湯を張りながらシャワーを浴びる。

「はー飲み明かしからのダラけた寝起き、その後のシャワー、良いねぇ良いねぇ」

 呟きながらいつもよりのんびり身体を洗って、波波と湯を張った湯船に浮かぶ。

「あはー」

 天井を見ながら呆ける。いやぁ素晴らしい。その後三十分くらい浸かってから風呂を出た。


 風呂から上がって部屋に戻るとカイトとヴェインが起きてきた。

「おはようさん」

「ん〜おはようこざいま……ふ」

「おはようございます」

 カイトはどうやらまだ眠そうにしている。仕方ない、もう少し夢の中にいさせてやるか。横についてやると案の定、昨日と同じく抱きついて眠った。

「うへへ……」

「Kさん、涎でてますよ」

「うお、マジか」

 ヴェインに指摘されて口を拭うと確かに涎が出ていた。危ねぇ危ねぇ。

「お風呂頂いてもいいですか?」

「おう、湯は残してあるけどヌルかったら張り直してくれー」

 そう伝えるとヴェインは風呂場に消えた。そういやアイツは私のカイトへの接し方に何も言わなかったな。まぁ色々分かってんのかもしれん。

 ヴェインが風呂から上がるとカイトも起きて風呂に入り、暫く準備してから仕事の準備にかかる事になった。


「さーて、先ずは買い物だな」

「そうですね……携行品の類は少ないですし」

「ボクは薬草を買い足さないと」

「私はそもそも装備を買わないとなー」

 そう、私には装備がまるでない。というより服もない。ヴェインを見れば頑丈そうな金属の防具つけてるし、カイトはちゃんと野山に入っていける装備をしてる。

「貴女ならば正真正銘の徒手空拳でも大丈夫かと思いますが……」

「いやー折角異世界来たしそれっぽい装備あっても面白いかなー、と」

「あはは、装備はお飾りって事ですかね」

 そりゃそうだ、折角来たんだ何時もの窮屈な戦闘服バトルスーツじゃなくてもっと変わった装備つけて仕事したいぜ。コスプレって感じか? ゲームで言うならアバター装備みたいな。

「おねえさん、それなら良い店がありますよ」

「へぇ、どんな感じなんだ?」

「既製品から受注生産、多種多様な武器防具、装飾品と何でもあるお店です」

「ホントか! ならそこに行こう!」

「私は携行品を見繕ってきますね」

 よーし、買い物に行こう。カイトを見ると少し目に期待感がある。多分今から行く店に行ってみたかったんだろう。情報は知ってたし少し入った事もあったんだろうが雰囲気に負けて長くは居られなかったって感じか。

 宿の前で二手に分かれ、私とカイトは先ずギルドに向かう。金をおろす為だ。

 行きしなに回りを見るとやはり賑わっている。ぎゅう詰めという程ではないが人通りも多く、ちらほら露店もあるし占い屋みたいなのもある。うーん、やはりファンタジーだ。どちらかと言えばFでお洒落な方のファンタジーだ。あのシリーズは面白いが長すぎて本当に終わるのが何時になるやら分からん。

「あ、ギルドに着きましたね」

「おっと、んじゃ金おろすか」

 金庫の受付に行って残高を見ると賞金の80000Gと前払い報酬50000Gが入ってた。これなら問題ない。装備一式揃えるなら大分といるだろうからゴッソリ50000Gおろした。

「あの、くれぐれもお気をつけて……」

「はいはい、ありがとさん」

 半分引きつってる受付のねーちゃんにチップ渡してギルドを出る。

 私から引ったくれるなら引ったくってみやがれ。出来たとして後で色々払って貰うがな。ああ、スろうとしたら手があらぬ方に曲がるから覚悟しろ。


 ぼちぼちと辺りを見つつ歩を進めていくと辺りの店より一回りデカい店が一軒現れた。

「ここです。本当に何でもあるんですよ」

「何でもあるって割には小さくないか?」

「中に入ればわかります」

 どういうこった? よく分からんが足を踏み入れるといきなりだだっ広い空間が現れてそこに様々な商品がデパートみたく並んでいく。空間系の魔法か何かか?

「ここは空間を拡張しているんです。だから見た目よりも広いんですよ」

「はーなるほどなぁ」







 面白いな、まぁとにかく買い物だ買い物!





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