22.育児のすゝめ
魚の成長スピードは人間とは比較にならないほど早い。
多くの場合、店頭に並ぶスネークヘッドはある程度のところまで成長した個体である。しかし中には例外もあって、特に繁殖方法が確立されている種類はベビーが大量に出回ることも珍しくない。カムルチーとかタイワンドジョウとか。
以前も少し触れたが、わたしもこのようなベビーを購入して育てた経験がある。
コウタイの話だ。
2016年7月、わたしは行きつけのアクアショップにコウタイベビーが入荷しているのを発見した。当時のわたしは渋い系のスネークヘッドを探していて、コウタイはまさしく条件に合致する魚であったため、その場で一も二もなくお買い上げとなった。
コウタイのベビーは「透明」という印象が強い。
より正確に言えば、一応色づいてはいる。ボディは薄い褐色で、凝視してみると将来縞になるのであろう黒い模様がうっすら見て取れる。
じゃあ何が透明なのかと言うと、答えは「ヒレ」。
コウタイのベビーのヒレは白くスモークがかかったような色合いをしていて、そのうえでヒレ越しに向こう側の景色を透かし見られる程度にクリアーなのだ。
体も小さければ体色も薄くヒレも透明。いかにも「ベビー」といった風貌である。
……が。
そんなあどけなさは三ヶ月も経つと霧消してしまう。
魚体は縦にも横にもサイズアップし、面構えには迫力が出てくる。体色はヒレまで含めて濃さを増して、バンド状の模様やラメのようなスポットもクッキリする。
この「幼児」から「若者」への変貌こそ、魚を飼っていて最も顕著に成長を感じることのできる期間だと思われる。もちろん以後も少しずつサイズアップしてはいくのだが、フォルムや模様が目に見えて変わるのはやっぱり初めの数ヶ月だけだ。
小さいうちは色も模様もハッキリしないから、成長後にしっかり色が揚がる「当たり」の個体をお迎えできるかどうかは賭けになる。しかしそのリスクを許容できるのならば、一度はベビーから育ててみるのも乙なものと言えよう。
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