20.餌のバリエーション
今まで再三述べてきたとおり、スネークヘッドは肉食魚である。
そしてこれも繰り返しになるが、わたしは肉食魚を飼う醍醐味はダイナミックな捕食シーンにあると思っている。逃げる獲物を追いかけて食らいつく、あるいは待ち伏せて突如ひと呑みにする。その瞬間こそが最も「生命」を感じるタイミングなのだ。
しかし、ならば生き餌しか使わないのかと言うと、まったくそんなことはない。
餌となるメダカやアカヒレがかわいそうだから……なんて感覚を持ち合わせているわけでは正直なくて(べつにそういう感情を抱くことを責めようとは思わないが、もとより生き物を飼うという行為には少なからず命の選択が含まれているのだから今更だろう)、身も蓋もない話、生き餌ばかりだと高くつくというのが理由だ。
たとえば、わたしの生活圏内にあるアクアショップでは、メダカ1匹30円という価格設定が為されている。
そして現在わたしの家にいるバイオレットスネークヘッドは、メダカ100匹を一週間で平らげる。ということは単純計算で3,000円/週。月に直せばおよそ12,000円の出費となる。許容できないとまでは言わないまでも、もうちょっと何とかならんのかと渋い顔にはなってしまう数字だ。
そこで登場するのが人工の合成飼料である。
わたしはキョーリンの「ひかりクレストカーニバル」という商品を使っている。210g入りで定価2,400円。1袋買えば数ヶ月はもつ。人工餌がいかにリーズナブルであるか嫌でもわかろうというものだ。
また、冷凍餌や乾燥餌も選択肢に入る。フリーズドライの淡水エビやアカムシ、イトミミズといった餌を準備しておくと、給餌にバリエーションを持たせることができる。
で、この「バリエーション」が大事だとわたしは考えていたりする。
実際にわたしがスネークヘッドのために取り扱った餌の種類をまとめてみよう。
人工餌:ひかりクレストカーニバル、クレストフリークレッドバル(※注1)
生き餌:メダカ、アカヒレ、小赤(※注2)、淡水エビ、ミルワーム(※注3)
冷凍餌:アカムシ、コオロギ
乾燥餌:クリル(※注4)、淡水エビ、アカムシ、イトミミズ
基本的には人工餌が中心で、合間合間に冷凍餌や乾燥餌を織り交ぜていく方法をとっている。そんなに他のアクアリストと違ったことはしていない……はずである。
ちなみに、すべてのスネークヘッドがすべての餌を選り好みせず食したわけではない。ブルームーンギャラクシーはメダカやアカヒレをあまり好まない個体だったし、かと思えばアイスファイヤーやコウタイは猛然と小魚たちを追いかけ回した。バイオレットは気分屋で、人工餌や乾燥餌を口にすらしないこともある。
個体ごとに好みが異なっていたり、同じ個体ですら時と場合によって食べたり食べなかったりする。だからこそ多様な餌をストックしておくことが望ましいのだ。
……あとは単純に、いろんな餌をあげるほうが楽しいしね。
◇ ◇ ◇
※注1:キョーリンが販売している人工餌の一種。カーニバルよりちょっとだけ高価だが、色揚げ効果や成長性の高さはちょっとどころではないため総合的なコストパフォーマンスは良さげ。ただし色揚げは赤系なのでわたしの飼育個体にはあまり関係なかった。
※注2:主に餌用として売られている和金のこと。最小サイズが「小赤」、大きくなると「姉金」など成長度合いによって呼び方が変わる。
※注3:ゴミムシダマシの幼虫。ハムスターや爬虫類の餌としてもよく使われる。簡単にストックできるし勝手に繁殖してくれるのでオススメだが、これ一辺倒だと栄養が偏ってしまうので注意。おやつ程度に考えておくのが無難だろう。
※注4:オキアミ。海産物であるため塩気が利いており、ぶっちゃけ人間が食べてもけっこうイケる。裏を返せば「淡水魚に食べさせすぎるのは危険」ということでもあるので、これもやはりおやつ程度と捉えておこう。
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