『流石ですわ、お兄様』と褒めてくれる妹が欲しかったけど、何故か自称張飛の生まれ変わりの弟が養子で来て『さすがだ、兄じゃ!』と褒めてくれるようになった件について
鈴麗競の当日、モブ子は学校をずる休みしました ver2.0
鈴麗競の当日、モブ子は学校をずる休みしました ver2.0
鈴麗競の当日の朝、僕が登校しようとリビングルームに行くと、
「私は準備をしなくてはならないから今日は学校を休むわ」
モブ子はそんな事を言い出した。
さすがにそれは不味いと思って、
「学校だけには行かないと。一度さぼったらサボり癖がついちゃうよ? そのうちに学校に行かなくなって、ニートになっちゃうかもしれないじゃないか」
「はい? 何を言っているの、兄じゃ? 頭は大丈夫? 病院行く?」
モブ子は僕の前まで来て、心配そうに顔をのぞき込んでくる。
「熱でもあるんじゃない?」
そう言って、僕のおでこに右手を当ててながら、自分のおでこに左手を当てる。
そうしながら、不安げな瞳で僕の目を見つめてくる。
「……熱はないみたいね。なら、頭のネジが多少おかしくなってきただけのようで安心したわ」
モブ子は自分のおでこから左手を、僕のおでこから右手を離して、安堵したような笑みを向けながらも、さらりと酷い事を言ってくる。
「ネジも何も僕は正常だよ。どこがおかしいっていうんだ?」
「全て」
「全否定するかな」
「あら? そう思えたの? 自意識過剰ね」
納得できないといった目で僕を見つめ返してくる。
そういう視線を受けると、何も言えなくなってしまう。
これも全てはモブ子の威圧感によるものなのか。
「衣装を用意する必要があるし、千宮院さんには負けるワケにはいかないのよ。負けられない戦いがここにあるといったところね」
「もしかして、僕……」
「違うわ。絶対に違うわ。兄じゃはどうでもいいの。刺身の盛り合わせにのっているタンポポのようなものね」
僕が言いかけるのを遮るようにして、きっぱりと否定された。
「それは、タンポポじゃなくて菊だよ」
「分かっているわよ。飾りものにある事は代わりないって意味よ」
「僕が……飾りもの、ね」
僕の取り合いのはずなんだけど、賞品でもある僕がこんな扱いをされるのは、なんか悲しいものがある。
というか、鈴麗競って、どんな事を競うんだろう?
僕をときめかすとか言っていたけど、どうやってやるんだろう?
それ以前に、僕はときめいたりするのかな?
二人のどちらかに対して。
「学校には風邪気味って連絡するから問題ないわ」
「……問題あると思うけど。今日は千宮院蘭さんとの対決だって話が流れている気がするし」
「それもそうね。なら、連絡せずに休むがいいのかもしれないわね」
それだと先生から連絡が来るから、余計に問題になりそうな気も……。
「あれ? そういえば、千宮院さんって、モブ子の学校だと千宮院って名乗っていないんだよね? 黒磯真紀子っていう名前だっけ? だったら、伝わっていないかもね」
どうして別の名前があるのかは説明されてはいないが、何か深い理由があるに違いない。
「そうだったわね。たぶん越後のちりめん問屋のようなものじゃないの」
「……水戸黄門の?」
「ええ。自分の身分などを隠すために別名を名乗っているのかも、って話よ」
「なるほどね」
名前や身分を偽ってまで生活する意味ってなんだろうな?
考えても庶民の僕には分からない事だから、やっぱり考えないようにしよう。
「千宮院さんも休んでいそうだから、私も休んでも問題ないわよ。だから、兄じゃはさっさと学校に行きなさい」
しっしっと動物を追い払うかのように、手で僕に出て行けと合図を送ってくる。
「今日だけだからね、見過ごすのは。それじゃ、行ってくる」
モブ子に追い出されるんじゃなくて、学校に行くだけだからね。
そう思いながら、リビングルームを出て、玄関へと向かう。
靴を履いて、ドアを開けて、外へと出る。
万次郎は牧田さんと一緒に登校するとかでもう家を出て行ってしまっているので、僕一人での登校だ。
「……ん?」
僕の家の前に、変なおっさんが立っていた。
天狗のように長い鼻を持つ、白髪交じりのぼさぼさ頭をした挙動不審人物そのもののおっさんだ。
近所でその人が子供に声かけなんてものをしたら、必ず事案になるに違いない。
「うちに何か用で?」
とりあえず、僕の方から声かけしておこう。
また僕か万次郎を狙っている人物かもしれないし。
変態だったら、事案として警察に通報しよう。
「ああ、私は……私はですね、ラリアット・フランケンシュタイナーと言いまして、千宮院家の命で……えっと、明神輝里に用がありまして……」
ところどころ、もごもごと何を言っているのか聴き取りづらかったけれども、どうやら、千宮院さんの使いの者のようだと分かった。
しかも、モブ子に用があるだと?
鈴麗競に関する事なのかな?
「モブ子!! 千宮院家の使いっていう人が来ているよ!」
閉まってしまったドアを開けて、家の中にいるであろうモブ子にそう呼びかけた。
「すぐ出てくると思うんで」
僕が聞いちゃいけない話かもしれないから、僕はラリアット・フランケンシュタイナーと名乗ったおっさんの横を通り過ぎて、学校へと向かおうとした。
その瞬間、目の前がパッと光った。
その光の中で、何か妙な爆発物のようなものを身体に巻いたモブ子の姿が一瞬だけ映った。
その爆発物以外は何も着ていなくて、ようは裸に近いという姿だった。
ん?
これは予知能力?
もしかして、あんな格好で僕の事をときめかせようとかするのかな、モブ子は?
それって、ただの変態じゃないか。
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