21 雨の日の植物園
雨の日の植物園
植物園の中は、突然雨が降り出した外の景色とはまったく違っていて、雨の音も聞こえず、とても静かな世界だった。
気温も保たれていて、未来の周囲にはたくさんの緑があった。
植物園にやってきたのは、初めてのことだったけど、案外良い場所なんだな、と未来は思った。
未来はここで、ただ雨がしのげれば良いと思っていただけなのだけど、せっかくだからと思って、(ただだし)雨の雫を白いタオルで拭ってから、この『ふれあい植物園』の中を見て回ることにした。
ふれあい植物園の中は、大きなドーム型の温室の構造になっていて、その中に幾つかの大きさの違った、大中小の、丸い植物たちが植えられた九つの異なったコーナーがあり、その植物園の様子を描いた手書きの地図が、入り口の近くの看板に描いてあった。
未来はその地図を見て、順番に植物園の中の植物たちを観察していった。
雨の日の植物園の中には(こんなに素敵な場所なのに)人が誰もいなかった。それが少しだけ未来の心を不安にさせていた。
未来は三つの丸い植物のコーナーを見たあとで、中心にある、一番大きな丸い植物のコーナーのところに移動をした。
そこには休憩所のような場所があり、そこには自動販売機と、それから休憩用のベンチがあった。
「あ」
そのベンチのところを見て、未来は思わずそう声を出してしまった。
なぜならそこに、(誰もいないと思っていたのに)一人の未来と同い年くらいの男の子が、ベンチに座っていたからだった。
その男の子は声を出したことで未来のことに気がついて、ふっと顔をあげて未来を見た。
それが未来と涙との、二人の初めての出会いだった。
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