6 あなたに、嘘はつかない。
あなたに、嘘はつかない。
雨はいつまでも降り続いていた。
まりもはずっと、その雨を見ていた。
「こんなことをいうのは少し変なんですけど……」とまりもを見て小道さんが言った。
「なんですか?」まりもは言う。
「双葉さんは、どこか僕の亡くなった妻に、その雰囲気がよく似ているんです」と小道さんは言った。
「先生の奥さんってどんな人?」朝顔が言った。
「写真があるよ。見るかい?」
「見る!」
小道さんはズボンのポケットから古びた財布を取り出した。そして、その財布の中にしまってあった、一枚の写真を取り出すと、それを朝顔に手渡した。
「へー」
写真を見ている朝顔の背後から、同じように写真をじっと見て、紫陽花が言った。
「まりもお姉ちゃんに似てるね」
と朝顔がまりもを見てそう言った。
「あの、その写真。私も見ていいですか?」まりもは言う。
「もちろん。いいですよ」小道さんは言った。
「はい。まりもお姉ちゃん」朝顔が言う。
まりもは朝顔から写真を受け取ると、その写真を真剣な眼差しでじっと見つめた。
そこには、一人の若い女性の姿が写っていた。
年齢は、……二十歳、くらいだろうか?
「妻の若いときの写真です。その当時、妻は二十一歳で、僕は二十四歳でした」
そう言ってから、小道さんはなにかを思い出すようにして、雨の降る庭に目を向けた。
写真に写っていた女性は、確かに少し、まりもに似ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます