第126話 久しぶり
無事修学旅行から帰ってきた。
楓とも友達として今までどおり付き合う事になった。
楓と南の事を中居達に伝えると
「お前達がそれでいいなら別に文句はねぇよ」
と言われ、グループに亀裂が入る事は無かった。
田口も驚異的な回復力で、最終日にはピンピンしていた。
元気になりすぎてまたもや担任に叱られていたのが田口らしい。
部屋で旅行の疲れを取ろうと休んでいた所に柚希からの呼び出しを受けて今は柚希との会議中だ。
「で? どうだったの?」
「お土産ならさっき渡しただろ?」
「そうじゃなくて! 何か進展はあった?」
「そうだなぁ……」
柚希が気になっているのは俺が一人に決めた事だろう。
そして楓と南との間で進展があったか聞いているんだろうが何処から話そう。
「えっと、楓と南にはちゃんと気持ちは伝えたよ」
「それはどっちかに告白したってこと?」
と言いながら目を輝かせて聞いてくる。
そんなに食いつかれると答えにくい。
「告白はしてない。楓と南とは付き合えないって伝えたよ」
俺がそう言うと
「え!? 二人ともフッたの!」
「まぁ、そうなるかな」
そして柚希の目は先ほどよりも更に輝かせて
「じゃあ誰と付き合うの? もしかして1年の大島さん? 2年の早川さん? それとも……」
「落ち着けって」
「え~、でも気になるじゃ~ん」
と言って頬を膨らませて足をパタパタさせる。
前までは気づかなかったけど、この仕草ってあざといな。
「ちゃんと気持ちは伝えるよ」
「本当に~?」
「ああ、明日にはちゃんと伝えるつもりだ」
「へ~、お兄ちゃんにしては凄い行動力じゃん」
「楓や南みたいにズルズルするのはもう止めたんだ。相手も辛いし俺も辛いからな」
「ふぅん、それじゃあ結果を楽しみにしてるね!」
こうして今日の会議は終了した。
部屋に戻り明日の準備をしてベッドに倒れ込む。
明日は頑張らないとな……。
翌日の正午、俺は待ち合わせの為にターミナル駅に居る。
昨日の内に連絡して今日会う事になった。
お土産を渡さなきゃならないし、それに……。
しばらく待っていると、改札から出て来る姿が見えた。
向こうも俺に気づいたらしく、小走りでこちらにやって来る。
「こんにちは、お待たせしてごめんなさい」
「こんにちは、全然大丈夫ですよ。今日は急にごめんなさい」
「いえ、誘って貰えて嬉しいです」
と言って友華さんは優しい微笑みを向けて来る。
その
「それじゃ取りあえず喫茶店にでも行きましょうか」
「はい」
喫茶店に移動し、席に着いたタイミングで
「これ、修学旅行のお土産です。定番で申し訳ないですけど」
「ありがとうございます。そんな事ないですよ、嬉しいです」
と言って微笑む。ああ、喜んでもらえて良かった。
「それとですね、楓と南にはキチンと気持ちを伝えました」
「そうですか。お二人は何と仰ってましたか?」
「二人とも友達としてこれからも付き合ってくれるそうです」
「それは良かったです」
「そうですね、二人には感謝してます」
修学旅行での出来事を話した後は軽く雑談をして喫茶店を後にした。
それから色々な店を周り、時刻は既に夕方の4時を過ぎていた。
今日はこの後バイトがある為、そろそろ買い物も終わりだ。
「今日はありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ楽しかったです」
「それなら良かったです」
「この後はバイトですよね?」
「はい、なので送って行けなくてすみません」
「気にしないでください。それよりも頑張ってくださいね」
「有難うございます。では気を付けて帰ってくださいね」
「はい、それでは失礼します」
ペコリとお辞儀をして友華さんは帰っていった。
俺はそのままバイト先へと向かった。
事務所に入ると珍しく沙月が先に来ていた。
「あっ、友也さんおはようございま~す!」
「おはよう、今日は早いな」
「友也さんに会いたくて早く来ちゃいました♪」
「はいはい、これは修学旅行のお土産な」
「ありがとーございます」
沙月にお土産を渡し、店長や他のスタッフ用のお土産を置いて着替えを済ます。
更衣室から出ると丁度店長が事務所にやってきた。
「お、友也か。今日は結構混んでるから覚悟しとけ」
「おはようございます。そんなに混んでるんですか?」
「ああ。ん? これは友也の土産か?」
「あ、はい。どうぞ皆で食べてください」
店長は「ああ、悪いな」と言って一口摘まんで直ぐに事務所から出て行ってしまった。
俺が働き始めてからあんなに忙しそうにしてる姿は初めて見る。
「なんか忙しそうですねー」
「そうだな」
「修学旅行はどうでした? 楽しかったですか?」
「まぁ、良い思い出になったよ」
「帰ってきたばかりなのにバイトで大変ですね」
「そうだな……っと時間だ。行くぞ」
「は~い」
その日のバイトは地獄の様に忙しかった。
お蔭で余計な事を考えずに済んだが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます