第41話 くっつけグループ

 俺がグループに入ったタイミングで水樹が


「よし、全員揃ったな」


 と言ったので、やはり及川達はメンバーでは無いらしい。

 一体何のグループなのか気になって聞いてみる。


「このメンバーはどういった集まりなんだ?」

「それから話さないとな」

「そうそう、いきなり誘われたから私もわかんない」

「タカヒロ何か企んでるね」


 と、俺以外のメンバーも知らない様だ。


「さっき中居に好きな奴が居るって話しただろ? それって及川の事なんだよ」

「えー、ホントに!」

「え? え? どゆこと?」


 マジか。これは驚いた。まさか相思相愛だったとは。

 しかし水瀬はさっきまでの会話にいなかったので話が見えてない様だ。


「そこでこのグループのメンバーで二人をくっつけようって作戦な訳」

「なるほどね~、だから佳奈子居ないのか~」

「ちょっと待って! どういう事?」


 まだ話が見えない水瀬が説明を要求する。

 

 「実はな……」


 水樹がこの間誕プレ買いに行った事や及川の気持ち等説明する。

 説明が終わると


「何それ! ワクワクが止まらないんだけど! っていうか何で今まで黙ってたのよ」

「だってお前恋バナとか黙ってられるのか?」

「そ、それはちゃんとPTOをわきまえるよ!」

「南、TPOね」

「そうだっけ? まぁ私もちゃんと黙ってられますって事ですよ」


 なんというか、水瀬はやっぱりテンション高いな。

 ノリで生きてるって感じだ。


「それで明後日の事なんだが、レジャー施設があるだろ? そこに行こうって話になってな」

「あ~、あそこいいよね~。何でも揃ってるし」

「私はボウリングがしたいです!」


 水瀬……。もしかして水瀬は空気が読めないのか?


「そこで上手い事二人にしてやろうって作戦だ」

「いいね~」

「青春ですな~」


 こういうの初めてだけど楽しいな。


「それで明日なんだけど皆予定ある? 空いてたら作戦会議をしたい」

「私は大丈夫だよ~」

「私も!」

「俺も特に予定は無い」


 作戦会議か。ワクワクしてきた。


「で、何処でやる?」

「どうしよっか~?」

「だったら私の家来る? 丁度明日家族居ないから」

「いいね、助かる。 落ち着いて話したいしな」

「南の家久しぶり」

「そしたら私の家の最寄り駅に13時に集合って事でオッケー?」

「ああ、大丈夫だ」

「うん、わかった~」

「わ、わかった」


 俺だけ拒否出来ないので賛同する。

 女子の家に何の躊躇も無く行けるって凄いな。やっぱり水樹は結構遊んでるんだろうか。

 いや、俺も楓の家に行った事あるか。でもあの時は柚希も一緒だったし、脅されてたしな。


「じゃあとりあえず明日また話すって事で」

「わかった~」

「オッケー」

「了解」


 こうして本日二度目の会議が終わった。

 なんか、青春って感じだな。 

 その後柚希といつもの会議を滞りなく済ませ就寝した。


 昨日楓に選んで貰った服に身を包み、最寄り駅まで歩いている。

 水瀬とは最寄り駅が一緒なのは知ってるが家が何処にあるのかまでは聞いていない。

 もしかしたら中学の時にニアミスしてるかもな。

 

 最寄り駅に着くと、既に水樹が待っていた。

 壁に寄りかかりスマホを見ている。

 ただそれだけなのにリア充オーラが発せられてる様に見える。

 俺に気づいた水樹が


「おう」


 と軽く手を上げて挨拶してきたので


「おう、早いな」


 と俺も同じ動作で対応する。

 まだリア充同士の気さくな感じに慣れない。


「さっき着いたばっかだよ。ってか友也の最寄り駅もここだったんだな」

「ああ、俺も水瀬が同じ最寄り駅だって知った時はビックリしたよ」


 そんな会話をしていると


「おーい、お待たせ!」

「二人ともはやいね~」


 と何故か水瀬と一緒に楓も居た。

 まぁ女子には女子の都合があるのだろう。


「全員揃ったし行くか」


 と水樹の号令で水瀬の家に向かった。


 水瀬の家はどこにでもある普通の一軒家だった。

 まぁ楓みたいな豪邸ばかりじゃないよな。

 ウチだって普通だし。


「どうぞどうぞ、狭苦しい所ですが入って入って」


 と玄関のドアを開けて皆を招き入れる。

 水樹は慣れた感じでどんどん進んで行く。

 俺はどうしたらいいかわからず辺りをキョロキョロ見回す。

 

「二階が私の部屋だから、こっちこっち」

「おう」


 と水瀬が階段を上っていき、その後を水樹が着いて行く。

 あれ? 楓が居ない。

 そう思い玄関の方を振り返ると、俺達が脱ぎ散らかした靴を整えていた。

 もう頑張るのは止めるって言ってたけど、こういう事を自然に出来るのは凄いな。

 

「あれ、どうしたの? 皆行っちゃったよ」

「楓を待ってた。俺達の靴まで揃えるなんて凄いな」

「ありがとう。もう癖になっちゃってるかも」

「それでもだよ。なんていうか、惚れ直した」

「あ、ありがとう……」


 自分で言って恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じる。

 楓も顔を赤くして見つめてくる。


「……」

「……」


 視線が外せない。っていうかどんどん近くなってるような……。


「ちょっとお二人さん? いちゃつくならホテルいきましょうね~」


 と二階の踊り場から水瀬に声を掛けられて我に帰る。

 楓も慌てて少し距離を取る。


「ちゃんと場所はわきまえるよ!」


 という楓のちょっとズレた突っ込みを華麗にスルーする水瀬

 俺的にはスルー出来ない内容だったんだけど。


「いいから早くきて」


 その言葉に従い二人で階段を上る。

 

 水瀬の部屋に入ると水樹が既にくつろいでいた。

 その隣に俺も腰を降ろす。

 自然と円陣を組むような形でお互い向き合って座っている。


「とりあえず何から話そうか?」


 と水樹が口火を切ったが、俺はずっと疑問に思っていた事を口にする。


「その前にいいか?」

「どうした友也?」

「当事者である中居と及川が居ないのはいいとして、何で田口は居ないんだ?」


 田口は誕プレ選びの時からメンバーから外されている。

 元ぼっちとしてはほっとけなかった。

 しかし、水樹の放った言葉で俺は、それならしょうがないなと思ってしまった。


「田口に知らない演技出来ると思うか?」


 すまない田口、今回は我慢してくれ。

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