第474話都内に戻るプライベートジェット機内にて

那覇に戻った華音は、そのまま、お姉さまたちと一緒に、柳生事務所のプライベートジェットで東京に戻ることになった。

その帰京のあっさりさに、ついシルビアと春香が文句。


シルビア

「せめて市内観光とかしないの?」

春香

「お土産を買う時間もない」


華音は、面倒そうな顔。

「お土産は、お屋敷にお菓子を買った」

「それに、僕は忙しいの、万葉集の練習もあるし」

エレーナは華音に同情する。

「忙しい時は、仕方ないと思うよ」

「華音君の心を占めているのは、そのほうが大きそう」

瞳は、ぴったりと華音に寄り添う。

「私は、華音君が無事に戻ってくれれば、それでいいの」

「本当に心配だったから」


柳生霧冬が華音に尋ねた。

「おい、華音」

「これからの気にかかっとることは何や?」


華音は少し考えて、答えた。

「まずは犬養先生の講演で、人麻呂様を詠唱すること」

「それからは、学園の人たちと奈良旅行が大きなイベント」

そして、柳生霧冬を見る。

「師匠、また奈良の山で修業なんて言わないでしょうね」


柳生霧冬は、慌てて首を横に振る。

「あほか、俺も年や、殺す気か」


潮崎師匠も口を開いた。

「まあ、華音の格闘を使う場面は、当分ないやろ」

「世界でもトップクラスの猛者を、斃してしまったしな」

「恐ろしくて、日本には近寄れん」


結局眠ってしまった華音を支えながら、瞳は思った。

「学園の剣道部とか柔道部とか、華音君の実力も知らないで、迫った」

「挨拶に来ないから生意気とか」

「奈良の田舎者とか、小馬鹿にして」

「でも、華音君は、何も表情を変えずに対応した」

「内心は、面倒だったのかもしれない」


シルビアが春香に尋ねた。

「ねえ、春香、クリスマスは東京だけど」

「お正月は京都に戻るの?」

春香は思案顔。

「親からは戻れって言われとる」

「うちも半分は、その気持なんやけど」

「華音は、どうするんやろ」

エレーナが眠っている華音にかわって答えた。

「一度聞いたけど、戻らないって」

「万葉集の講演会もあるし、読書が進んでいないとか」

「まあ、私も戻らないけど」


春香は、眠り続ける華音を見る。

「学園の人を連れて帰るのはいいけど」

「正月くらい戻ればいいのに」

「時々、メチャ頑固者や」


柳生事務所のプライベートジェットは、既に富士山上空を過ぎ、羽田に近づいている。

華音は、ようやく目を覚ました。

そして、隣の瞳を見て、赤面。

「あ!ごめんなさい!寝ちゃった」


その華音見て、瞳も赤面、

「あ・・・いいよ、華音君、気持ちよさそうだったし・・・」


周囲が頭を抱えるほどの、ほんわかムードが漂っている。

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