第471話対決!VS国際テロ集団(7)対ボルコフ

カマルにしてもアランにしても、殺されてはいないものの、瀕死の状態。

それも、一瞬で、全く見知らぬ少年に。


ジャンがうめいた。

「カマルの時は、ただナイフを持ったカマルの肘を蹴り上げただけ」

「それが、正確にカマルの口の中に、歯を折って突き刺さった」

「毒塗りナイフだったから、早く解毒しないと、間に合わない」

「しかし・・・あの少年は殺さないとも言っていた、8割の力でなど」

「本気であれば、蹴る角度を変えて、そのまま喉に、そして即死だ」


ジャンはすでにピクリとも動かないカマルから目をそらして、華音に背中に乗られ、腕と手首が極められているアランを見る。

「あの少年は、正確で速い蹴りだけではない、関節も簡単に極めるのか」

「アランのショルダータックルを軽くかわして、アランの勢いと体重を加算して、甲板に顔から激突させる」

「その際に、膝を落とし、アランの肩甲骨を粉砕」

「そのまま、アランの腕と関節を極める」

「アランは、痛みで声も出ない」


ジャンは、まだアランから離れない華音を見た。

「シオザキさんが、連れて来るわけだ」

「今のままで、シオザキさんより、怖い」

「もし。本気になれば・・・」

ジャンが、恐ろしさに身体を震わせた時だった。


いきなりボルコフが、低いタックルの姿勢を取った。

ジャンは、アランを止めようとする。

「おい!ボルコフ!よせ!」


しかし、ボルコフは止まらない。

「るせえ!ジャン!あのガキが後ろを向いている今がチャンスだ!」

とにかく、ジャンの指示などは聞かない。

その低い姿勢のまま、アランの腕を極めている華音に迫る。


「馬鹿が・・・」

潮崎師匠が、ため息をついた。


柳生霧冬もつまらなさそうな顔。

「ああ、ロシア人って、あんな感じか?」

「もう少し、ずる賢いと思ったけどな」

「不安で切れると、ああなるのか?」


次の瞬間だった。


「バシッ」

乾いた打撃音とともに、ボルコフが宙を舞った。

そして、そのまま甲板に叩きつけられている。


いつの間に顔を見せていた井岡スタッフが、目をむいた。

「・・・少しアッパー気味に」

「振り向きざまの華音君の右パンチだ」

「そのままストレートだと顎を砕いて、殺してしまう」

「だから、アッパーにして、宙を舞わせた」


柳生隆も解説。

「華音は華音なりに加減した」

「本気で打てば、顎だけではない、首も折れる」


潮崎師匠が、顔面蒼白のジャンに声をかけた。

「おい!お前はどうする?」

「華音は、まだ本気を出していないぞ」

「お前だけ、逃げるか?」


ジャンは迷った。

「徒手格闘では、勝てる気がしない」

「かといって、得意のナイフも・・・カマルのやられ方を見ると不安」

そして、腰に差した短剣を見る。

「これなら・・・」

「俺だって、誰にも負けない」


慎重な態度を貫いていたジャンの瞳に、ようやく闘志が芽生えている。


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