第288話文学研究会では、なごやかに話が進む。

大きな盛り上がりとなった花壇と菜園作りを終えた華音は、そのまま文学研究会の部室に向かう。

人だかりの中、それを見ていた文学研究会の面々が華音をサッと囲む。


長谷川直美

「他の部、特に女どもには、これ以上華音君を見せない」

花井芳香

「華音君は文学研究会で独占すべき」

佐藤美紀

「最近、女子体操部が狙っているらしいから、絶対隔離」

志田真由美

「レオタードによる色仕掛けか・・・何と不純な・・・」

文学研究会顧問の田中蘭も、そんな感じ。

「とにかく今後は、登校時の駅から、下校時の駅までは完全警護としよう」


・・・・など、華音隔離独占計画を歩きながら検討するけれど、当の華音はあまり聞いていない。


「日当たりと水はけ、後は風の向きかなあ」

「雑草もこまめに取る」

「肥料も大事、できれば自家製がいいなあ」

などと、花壇、菜園のことを考えている。


それでも華音は、真面目。

文学研究会の部室に入ると、秋の文化祭の検討会に参加する。


長谷川直美

「前に話し合いをした、源氏物語の紫上をテーマにした文学喫茶の話を進めましょう」

花井芳香

「講師は華音君でいいのかな、資料はどうする?」

華音

「僕の家に資料が多いから、そこで作ってもどうかなと」

佐藤美紀はすぐに話題を変えてしまう。

「ねえ、あのルーマニアのエレーナさんもいるの?また見たい」

華音

「はい・・・日中は大使館で働いたり大学に通ったりするみたいです」

「土日はいますよ」

志田真由美

「この間は、御馳走してもらったから、お返ししたいよね」

長谷川直美

「私もそれは考えていたの、和風の食べたことのないようなもの」

佐藤美紀

「絶対に欧米では見かけないものがいい」

志田真由美

「うーん・・・京西陣出身の春香さんなら、相談したい、京風のお菓子とかさ」

華音は、少し考える。

「奈良というか、吉野の葛餅とか・・・そういう味は欧米ではないはず」

「淡い味・・・日本独特の味と思うけれど」


顧問の田中蘭が、少し話を整理する。

「ルーマニアのエレーナさんはとにかく、華音君のお屋敷で準備作業でいいのかな?華音君」

華音は、素直に頷く。

「僕の家で問題がなければかまいません」

「広い調理場もあるので、喫茶メニューの検討も出来ます」

花井芳香

「そうなると和洋折衷のお菓子もできないかなあ」

佐藤美紀

「葛餅にブルーベリーソースとか?」

志田真由美

「抹茶風味のドーナツ?」


華音は、そこでクスッと笑う。

「皆さん、食べるものが中心に・・・」

「飾り付けとか、お香とかは・・・」


佐藤美紀が手を打って大笑い。

「ついついエレーナさんを思うと、豊穣な食べる喜びがテーマに・・・」

・・・・・


などなど、実になごやかに、検討会は進んでいく。

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