第286話柳生清の詰問が続く、圧巻!華音のスコップ回し。

柳生清が、再び厳しい顔で剣道界の大物二人を睨み付ける。

「大方、大会のスポンサーにでも、脅されたんだろ?」

「新聞社?道着メーカー?マスコミ?広告会社?」


日本剣道協会の竹山が深く頭を下げる。

「はい、それは何度も・・・」

高校剣道連盟の宮本の顔が青い。

「絶対に出させるとまで、言い切ってしまいまして」


柳生清は、呆れたような顔。

「スポンサーの金に頼り過ぎ、言いなりか?」

「それとお前たちの、自分が言えば高校生なんて何でも聞くという傲慢さ」

「思い通りにならなければ、学園長を罵倒するのも、身の程を知らない傲慢さゆえ」

「お前らは理事だ何だって、おだてられ過ぎて、人の道の基本を外している」

「高校生の教育の一環の剣道だろ?」

「そんなスポンサーの利益のための剣道大会ではないはず」

「あまりにも商業主義に侵され過ぎているのでは?」

「そもそも剣道にしろ武道にしろ、商業主義とどれだけ関係があるのか?」

「お前ら、説明できるのか?」


柳生清の剣道界大物二人への、お叱りが続く中、応接室のドアがノックされ、事務員が入って来た。

事務員は吉村学園長に頭を下げ、何かを耳打ち。

吉村学園長は、それを聞くなり、口をおさえて笑いだした。

そして、それを見つめる柳生清と剣道界の大物二人に内容を話す。


「噂の華音君がね、学園整備の庭師さんと意気投合したんだって」

「それでね、スコップを振り始めて・・・でしょ?」


事務員も、その様子を見て来たようだ。

驚いた顔で報告する。

「まあ、あのスコップ振り、すごいんです」

「もうベテランの庭師さんが、大笑いで万歳」

「生徒も集まってきて、大騒ぎ」


それを聞いた柳生隆も笑い出す。

「見たくなった、面白そうだ」

「お前らも見るか?」


剣道界の大物二人は二の句もない。

目を丸くして応接間を出て、おそらく華音がスコップを振っているだろう人だかりに歩くことになった。



さて、華音のスコップ使いは、事務員の報告通り、凄まじい。

少々固めの花壇を、豆腐でも切るように、簡単に掘り起こしていく。

それを見守る庭師は、お手上げ状態。

「実に動きが速い、的確、機械並だ」


その華音のスコップ振りに触発されたのか、空手部主将の剛と剣道部主将の塚本もスコップを振るけれど、華音と比べると結果が「鉄器と割り箸」とも言えてしまうほどの差がある。


空手部主将剛

「日ごろの鍛錬は無意味?5分で腕から足腰までパンパンだ」

剣道部主将塚本

「華音君は、もう30分振って、また速くなってきた」

空手部主将剛は、息も荒い。

「こんなことが出来る華音君に喧嘩を売ってしまったとは・・・」

剣道部主将塚本は震えた。

「竹刀でよかった、スコップでもあれだけ速いって・・・」


華音は涼しい顔。

「こういうのも訓練になります、何より実際に役に立つ」

そして、余裕があるのか、重いスコップを二本の指で逆さに持ち、クルクルと回したりもする。


その華音は歩いて来た柳生清が目に入ったようだ。

「ああ!清さん、これ出来ます?霧冬先生直伝のスコップ回しです!」


それを聞いた柳生清は、苦笑い。

剣道界の大物二人は、ガクガクと震えている。


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