第284話強圧剣道界二人の大物VS吉村学園長

さて、華音たちの高校生は平穏に授業を受けていたけれど、学園長室には、二人の剣道界大物の来客があった。

一人は、高校剣道連盟理事の宮本、もう一人は、その上部団体の日本剣道協会の同じく理事の竹山と名乗った。


吉村学園長が、剣道部顧問の佐野と一緒に、二人に向かい合うと、まず高校剣道連盟の宮本が口を開いた。

「面会を受けていただき、誠にありがとうございます」

「少し、お尋ねしたいことがあるので、伺った次第なのです」

言葉は丁寧ながら、少々強圧的な雰囲気。

隣に座る日本剣道協会の竹山の視線も厳しい。


吉村学園長は、冷静を保つ。

ただ、吉村学園長の隣に座る剣道部佐野顧問は、少し顔が浮かない。


高校剣道連盟宮本の目が厳しい。

「お宅の学園には、確か三田華音という生徒がいるはずです」

「それは、事実ですね」


吉村学園長は、冷静。

「はい、おりますが、それが何か?」


高校剣道連盟宮本は、声を大きくする。

「今回の高校剣道連盟の大会に、その名前が乗っておりません」

「その理由をご説明いただきたい」

ますます、言い方が強圧的になる。


吉村学園長は冷静さを失わない。

「華音君は、剣道部ではありません、それが理由そのものです」

「それに何か問題が?」


いきなりその顔に朱が走る高校剣道連盟の宮本を抑えて、今度は日本剣道協会の竹山が大きな声。

「いったい、何を考えておられるのか、三田華音は昨年度の中学剣道日本一」

「それも、圧倒的な強さで優勝、姿をくらましたけれど・・・」

「それはご存知ですよね、学園長」


吉村学園長は、少々不機嫌に変わる。

「確かに、中学剣道日本一は、よく知っています」

「しかし、姿をくらました・・・その言い方は、いかがなものかと」

「大会が終われば、華音君は自由に帰っていいはず」

「あなた方に何の権限があって、姿をくらましたなどと言えるのですか?」


吉村学園長の隣に座る剣道部佐野顧問は、また震えている。


高校剣道連盟の宮本は、今度は佐野顧問に迫る。

「おい!佐野!何故、華音を剣道部に入れない!」

「お前が剣道部に入れていれば、こんなトラブルはないだろうが!」


剣道部佐野顧問が反論しようとしたけれど、吉村学園長がそれを制した。

吉村学園長

「部活動を選ぶ自由は、生徒にあります」

「華音君が剣道部を選ばないのは、華音君の自由なんです」

「それを学園側で強制はいたしません」


すると日本剣道協会の竹山が、怒りを顔にはっきりと出す。

「生徒の将来性を考えて、才能を育てるのが学校の役目だろう」

「ここの学園は、全くその役目のカケラも理解していないではないか?」

「そんな学園の学園長なんて、職務怠慢の極みだ」

「学園長なんて失格だな」


余りの暴言で、呆れ顔になる吉村学園長に、また高校剣道連盟の宮本が迫る。

「吉村学園長、華音の住所は?」

「もう、こんな学園には期待できない」

「こっちから出向く、教えなさい」


吉村学園長は、この時点で手元のスイッチを押す。

すると、応接室のドアにノック音。

吉村学園長の「どうぞ」の言葉と同時に、ドアが開き、柳生事務所所長の柳生清が入って来た。


その姿を見た剣道会の二人の大物は、いきなり立ち上がり、直立不動となっている。

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