第280話ポトフの昼食、華音たちは音楽で盛り上がる。

大広間での昼食は、じっくり煮込んだ具だくさんのポトフ、カフェオレ、バゲットといったシンプルなもの。


まず瞳が一口食べて目を丸くする。

「野菜の味が濃い、甘味がある、いいなあ・・・美味しい」

立花管理人が、うれしそうに瞳に説明。

「農園事業部が三鷹にありまして、土づくりも丁寧にしています」

「野菜は土からなのです、土の味が野菜の味となります」


エレーナも、食が進む。

「うん、味付けも素晴らしいけれど、野菜が本当に美味しい、お肉もいいなあ」

「フランス家庭料理だけど、これも好き」


瞳がエレーナにお願い。

「ねえ、今度、ルーマニアの煮込み料理を教えて」


エレーナは瞳の表情が可愛かったらしい。

「うん、瞳ちゃん、一緒に作ろう!」

華音をめぐってのライバル関係はさておき、料理好きでは共通するものがあるらしい。


華音は農園事業部に興味があるらしい。

「産直市もいいけれど、産直レストランもいいな」

「朝取りの野菜をそのまま調理して食べる」

「一番美味しい時に、食べてあげるのも、大切なこと」


シルビアはバゲットがお気に入り。

「ポトフはもちろん美味しい、バゲットがほど良い塩味」

春香はポトフのスープを飲み、

「京風ポトフも作ってみたい、煮込み料理は融通無碍」

と、しきりに新作を考えている様子。


今西圭子も満足。

「いい野菜で、ますます美容効果が高まる」

松田明美は、それについつい、皮肉。

「曲り角が近い人には、より効果が高い」

今西圭子は、テーブルの下で、松田明美の足を思いっきり蹴飛ばそうとするけれど、軽くかわされている。



さて、そんなのどかな昼食が終わり、華音が提案した音楽タイムとなった。


華音はヴァイオリンを取り出し、「ちょっと久しぶり」と言いながら、まず奏でたのはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のサワリ部分。


それには雨宮瞳とエレーナが目をパチクリ。

雨宮瞳

「すごい・・・かっこいい・・・」

エレーナ

「そのまま録画して動画サイトにアップしたらアクセス増えそう」


ただ、華音が弾いたのは、サワリ部分限定。

全員の楽器を見て、少し考える。

「ねえ、ジャズにしない?」

「僕はヴァイオリン、瞳ちゃんはヴォーカル、エレーナはフルート」

「シルビアがチェロ、春香さんがクラリネット」

「明美さんがピアノで圭子さんがパーカッション、スネアドラムになると、ジャズのほうが融通がきく」


シルビアが松田明美に声をかける。

「誰でも知っているのでいいよ」


松田明美は、そこで少し笑い、グレンミラーの名曲タキシードジャンクションのイントロを弾きだす。

少し不安だった瞳は「これ、中学の合唱部で歌った」と安心顔。

曲が進むにつれ、瞳の声は大きく響き、スイング感もアップ。

全員がアドリブまでこなし、大盛り上がり。


お屋敷の従業員もうれしそうに集まってくる中、立花管理人は満足な顔。

「やはり、音楽は人の心を音で結び付ける」

「華音様は、それをよくわかっている、なまじの言葉より、心で会話することができる」

「お祖父様の教育の賜物か」

その目を細めて音楽に興じる若者たちを見ている。

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