第258話永田町で大事故発生(3)薬師如来の治癒秘技が被害者を癒す

華音の薬師如来由来の秘力発揮は、車両同士の衝突により大量出血、心肺停止となっていた小さな女の子の父の意識を取り戻しただけではなかった。

柳生事務所所長の柳生清の手配で、柳生事務所ビル内の救急医療フロアにかつぎこまれた瀕死の交通事故被害者を次々に意識を回復、治癒の方向に向かわさせていく。


その華音の姿を見て、驚く以外にはないのが、柳生事務所の面々。


柳生清

「ここまですごいとは・・・ただ薬師如来の真言を印を切って唱えるだけで」

「ほぼ即死状態の人が、薬師如来の瑠璃光に包まれ、表情も呼吸も和らいでいく」

柳生隆

「まさに生き仏だ、とうとう本当の華音の力が出ている」

橋本スタッフ

「格闘技術がすごいなんてのは、華音君の表層部分。この人智を越えた力から比べれば、華音君の言う通り、どうでもいいこととわかる」

高田スタッフ

「不思議なのは、華音の治癒御技を受けた人が、数分後には手足を動かしていること、打撲とか骨折、内臓破裂までも治癒の方向なのか」

井岡スタッフ

「うん、おそらくそうさ、相当程度治す秘力を注いだのだと思う。さすが500年ぶりのお方だよ、ますます警護のし甲斐がある」


女性スタッフ陣は、それでも不安を覚える。

松田スタッフ

「でも、すごい精神力と、それを支える体力を使っているはず、治療の後が不安」

黒田スタッフ

「霧冬先生の厳しい修行に耐えきった華音君だけど、瀕死の人を呼び戻すなんて、かなり疲れるはず」

小島スタッフ

「確かに精力はすごい華音ちゃんだけど、それにも限度があるのでは・・・後で癒してあげたい」

小久保スタッフ

「華音ちゃんの治癒御技が終わったら、私たちが癒さないと」

吉田スタッフが小島スタッフと小久保スタッフに、少し苦言。

「あなたたち、あくまでも癒しに特定してね、ますます疲れさせるようなフラチなことは認めない」

その吉田スタッフの言葉は、実に厳しく的を射ていたのか、小島スタッフと小久保スタッフは、下を向いている。



さて、華音の治癒御技は交通事故被害者全員に施され、交通事故被害者は、その後柳生事務所ビルの医療スタッフに引き継がれた。

医療スタッフの長、森本が深く華音に頭を下げる。

「華音君、本当に助かった」

「なかなか現代医学の治療では考えられないけれど」

「事実としてあれほどの被害者たちが、治癒の方向に向かっている」


華音は、やはり秘力を大量に使ったためか、少々疲れ顔。

「いえいえ、僕でお役に立てれば、いつでもお使いください」

「お薬師様の御力をお借りして、辛く苦しい方々の意識の奥に、語りかけただけですので」


華音と柳生医療スタッフ長森本の間に立つ柳生清も満足そうな顔になるけれど、華音の関心は、すでに病人から別の対象に移ったようだ。

「清所長、この被害の発生原因となった煽り車両はどこに?」


すると柳生清が厳しい顔。

「暴走バイクだ」

「現在は、逃走中、ナンバーもわかっている」

「警察が全力で追っている」


すると華音の目が厳しく光った。

そして華音はその目を閉じ、つぶやきだす。

「どうも、かなり悪質な・・・」

「人の涙と痛み、苦しみをその喜びとするような輩」

「余罪も多そうで・・・」


華音は、そこまでつぶやき、その目を開け、はっきりとした言葉。

「清さん、鎌倉の小町が危ない、警察に連絡・・・急いでください」


柳生事務所所長、柳生清は華音の言葉を受け、警察に連絡を取っている。

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