第234話「くノ一封じ」の修行を受けていた華音

華音は、「誰かの手」については、すぐに特定ができた。

「エレーナさんだ」

「握って、そのまま寝てしまったのかな」

確かに、エレーナが一番華音に密着して、華音の「とある部分」を握り、寝息を立てている。


華音は、ここで対処法を考える。

「まずは、冷静さが大切」

「お姉さんたちは寝ている」

「下手に起こして、騒がれるのも面倒」


「・・・となると・・・」

華音は、その目を閉じた。

何しろ、ふくよかで、しっとりとしたエレーナの肌が密着している。

目を閉じないと、「思わぬ反応」が起きないとも限らない。


華音は、奈良の山での修行を思い出した。

「あの時は・・・去年の夏」

「霧冬先生では、なかった」

「先生が熊野から来た女性の先生、茜さん」

「茜さんは若くてきれいだった」

「夏の夜に一緒に寝る修行で教わったっけ」

「『くの一封じ』の技」

「そこで教わったのは・・・女性の・・・急所の一つ」


華音は、エレーナの耳に、視線を集中。

華音自体の身体を動かさず、口をすぼめる。

細くて一筋の息を、エレーナの耳に向けて放つ。


「・・・ん・・・」

「あ・・・」

すると、エレーナの身体が、その甘い吐息とともに、ビクンと動いた。


華音は、その瞬間を逃さない。

エレーナのほんの少し緩めた手のひらから、「とある部分」をさっと、解放。

そして、そのまま一気に立ち上がる。

この動きも、実にスムーズ。

全裸で眠っているお姉さんたちは、全く気がつかない。


しかし華音はホッとして、のんびりすることなどはない。

すぐさま、傍らにあった自分の服を身に着けてしまう。


ようやくホッとした時点で、「くノ一封じ修行」には、感謝を覚え、様々思い出す。


「あれも、一風変わった修行だったけれど、やってもらってよかった」

「霧冬先生が言うのに、女で身を亡ぼす武芸者も多い」

「その原因は、女の身体に溺れてしまうからだ」

「意味は理解できなかったけれど」

「霧冬先生が連れて来た茜さんの修行は大変だった」

「触られても、何をされても耐えきること」

「限界まで刺激される修行ばかり」

「あの修行なら、霧冬先生の修行のほうが楽だった」

「女性の身体のいろんな弱点も技術も教えてもらった」

「それも茜さんが、満足するまでだった」


そこまで思い出した時点で、華音は寝室を、音を立てずに後にした。

そして廊下を歩きだす。

「いつまでも、裸のお姉さんたちを見ていても仕方がない」

「他にもやることがある」

「とにかく、お祖父さんの日記を、読める日本語にしないとなあ」


「危機」から脱出すれば、いつもの真面目で素直な華音に戻っている。



一方、いつの間にか、華音に逃げられてしまったエレーナは、信じられない、かなりなショックで、目もトロンとしている。

「突然、華音君の吐息が耳にかかって、気持ち良くて全身の力が抜けた」

「まだ、身体がホワホワしている・・・奥がトロトロだ」

「追いかけようにも、これじゃ無理」

エレーナの瞳には、涙があふれている。

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