第217話危険な書籍は後回し、食堂へと向かう。
華音は真顔、エレーナの顔が蒼くなりはじめた時点で、立花管理人から華音のスマホにコール。
立花管理人
「確かにございます」
「ただ、一般の人が見るのには、少々危険」
「先に、ルーマニア料理試食ということで、書籍の内容確認は御学友がお帰りになられた後の方がよろしいかと」
華音は、その立花管理人の言葉と含まれた意図に答えた。
応接室にいる全員に声をかける。
「書籍については、少々時間がかかります」
「確認ができた時点で、立花管理人と僕、エレーナで対応します」
するとエレーナは華音の顔を見て、小さなウィンク。
華音の考えを読んだらしい。
エレーナも、パッと話題を変える。
「それでは、ルーマニア料理試食会ということでよろしいでしょうか」
シルビアもその「雰囲気」を察したようだ。
明るめの声で
「食堂に準備がしてありますので、移動しましょう」
春香は、にっこりと立ち上がる。
「それでは、私たちに続いてください、ご案内いたします」
長谷川直美他文学研究会の面々は、素直に立ち上がり、シルビアと春香の後に続く。
長谷川直美が文学研究会のメンバーに、
「私たちが手だしできる程度の書籍ではないみたい、だからルーマニア料理の試食を楽しみましょう」
と声をかけると、誰も異論がなく、もはやルーマニア料理への興味津々といった感じになっている。
ただ、雨宮瞳だけが華音に小さな声をかける。
「何かお手伝いできることがあったら言ってね」
「エレーナさんがちょっと不安なの」
その雨宮瞳の「不安」には、ルーマニア書籍への不安もあるけれど、「エレーナの華音のお嫁さんになる約束」も、含まれている。
華音は、そんな瞳にやさしい笑顔。
「大丈夫、瞳さん、心配しないでいいよ」
「僕を信じて」
そして華音も小さな声。
「瞳さんのことは、ずっと大事にしたい」
瞳は、全身に熱さを感じるけれど、華音はやさしい笑顔のまま。
その瞳にシルビアと春香が並んだ。
シルビア
「大丈夫、華音は人を裏切るタイプではないよ」
春香
「瞳ちゃんは、華音が最初にお迎えに行った女の子なんや、心配いらん」
シルビア
「いざとなったら、私たちも協力する」
春香
「うちもな、瞳ちゃんが好きや」
それでも瞳は不安。
「そのルーマニアの本も・・・何か怖い」
「ドラキュラとか黒魔術とか」
シルビアは首を横に振る。
「大丈夫、大切なことは、オタオタしないこと」
「必ず対応策がある」
春香は瞳の背中をポンと叩く。
「聖書の中でイエスが言っとるやろ?」
「神を怖れよ、悪霊は怖れるなって」
華音たちの進む先に、食堂のドアが見えて来た。
そして、甘いような美味しそうな香りが、漂って来る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます