第210話校門前の不穏情報と華音、そして柳生事務所

華音と文学研究会の面々が、文化祭の話などを終えて、部室を出ると雨宮瞳が不安な顔をして立っている。

華音は、それが気になったので、雨宮瞳に尋ねた。

「雨宮さん、テニス部の練習もあるのに、何かあったのですか?」

雨宮瞳は、文学研究会のメンバーに少し頭を下げ、話し出す。

「あのね、学園の校門の前に、他の高校の生徒だと思うんだけど何人か立っているの」

「それからね、他の生徒から聞いた話だと、華音君がいるかって聞かれたみたいなの」

「全員角刈りで、どうみても運動部系で・・・」

雨宮瞳は、そこで声を低くした。

「言い方が悪いかもしれないけれど、少々目付きが悪いみたい」


雨宮瞳の話に文学研究会のメンバーも反応する。

長谷川直美

「なんか、ヤバそうだね」

佐藤美紀

「裏門から帰る?」

志田真由美

「華音君を見れば、必ず何か言ってくる」

花井芳香

「学園長に連絡したほうがいいかな」


そんな様子で女子たちは、不安そうな顔を見せるけれど、華音はいつも通り冷静。

「まだ名前が出て、いるかいないか程度」

「相手の要求もないのに、その時点で避ける必要もありません」

そして、そのまま廊下をスタスタと歩きだす。


その歩きだした華音に、また別の情報が入った。

情報を持ってきたのは空手部の主将の剛。

剛も厳しめな顔。

「華音君、校門の前に、ヤバイ奴らが待っている」

「渋谷あたりでタムロしているヤンキー系」

「ナイフを手にしたり、チェーンを振り回したりして、下校の生徒を威嚇しているらしい」

「言っていることは、華音君をすぐに連れて来いって」


華音は、少し顔をしかめた。

「そういう他人を傷つける武器を・・・」

そして、空手部主将剛に頭を下げた。

「すみません、僕のために、みんなに心配と迷惑をかけてしまいまして」


空手部主将剛は、首を横に振る。

「いや、華音君は何も悪いことはしていない」

「ただ、どうしようかということ」

「他の剣道部の連中が、竹刀を持って校門まで向かうって、言っているけれど」


今度は華音が首を横に振る。

「いや、それは危険です」

「僕の事なので、僕が出向きます」


結局、華音は、校門に向かって真っすぐに歩きだす。


その華音に後ろから声がかかった。

「華音君、ちょと待ちなさい」

華音が振り向くと、吉村学園長が立っている。

そして、その後ろには、柳生事務所の清所長、隆、橋本スタッフ、小久保スタッフ、黒田スタッフが立っている。


驚く華音に、柳生隆。

「もう、警察に連絡した」

「それから、不逞な輩の学園にも」

「全ての校門前には監視カメラが設置済み」

「それが学園長室の監視モニターに映る」

「危険な動きを見せた段階で警察に通報となる」

その柳生隆の手には、タブレット。

柳生隆は華音にタブレットの画面を見せる。

「ほら、今、補導されていっただろ、こいつらの学園の先生も蒼い顔で付いて行く」


そのタブレット画面を見た華音は、本当に不思議そうな顔になっている。

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