第196話華音はお姉さまたちの抱き枕と化す。

井の頭線の吉祥寺駅と久我山駅の距離なので、すぐに久我山駅に到着、それから徒歩で屋敷に帰ると、立花管理人が出迎える。

「華音様、お疲れ様でした、危険なテロを未然に防いでいただきました」


華音は、笑顔で首を横に振る。

「いや、僕は少しお話をしただけ、ほとんど柳生事務所と根津のおじさんの仕事だった」

「官房長官も懐かしかった、祖父さんを思い出しました」


立花管理人も、うれしそうな顔になるけれど、お姉さんたちに、話は中断させられる。

松田明美

「ねえ、華音ちゃん、寝よう、疲れた」

今西圭子

「大きな仕事の後は、華音ちゃんを抱っこして眠るのが幸せなの、だから寝よう」


シルビアと春香は、何も言わずに、華音の両サイドを腕を組む。

そして華音は、ほぼ無抵抗で寝室に、ズルズルと引きずられていく。


寝室までの廊下で、それでも華音は、言葉で抵抗を試みる。

「ちょっとひどくない?僕の自由がない」

「もう少し立花さんとお話したかったのに」


しかし、途端に叱られる。

シルビア

「うるさい!寝るって言ったら寝るの!」

春香もきつい。

「そうだよ、私たちの楽しみを待たせないでよ、華音のアホ!」


華音は結局涙目で、寝室に入ることになった。


さて、お姉さんたちは、寝室に準備されていた浴衣に着替えるのに、全くタメライがない。

ポンポンと服を脱ぎながら、華音には不穏な会話。

シルビア

「ブラいらないよね」

松田明美

「華音ちゃんの顔にブラの跡がついても困る」

春香

「学園の教室で、女子に見抜かれてもそれは、問題がある」

今西圭子

「というよりは、そのまま包み込んだほうが気持ちがいい」


華音が「うっ」と尻込みしていると、途端にシルビアから「さっさと浴衣を着て!」と、また「お叱り」の声。

仕方なく華音が着替えを急ぐと松田明美がニンマリ。

「でも、素肌でもいいかなあ、華音ちゃんのお肌大好き、すべすべ、ふかふかで」

今西圭子も目が輝く。

「うん、抱っこしているだけで、ジンワリ、ホカホカ、癒されるの」

春香は、シルビアに声をかける。

「華音、すっぽんぽんでもいいかも」

シルビアは顔を赤くするけれど、それでも首を横に振る。

「いやいや、嫌がる華音を無理やり脱がすのも面白い」


・・・・・


そんな不穏な会話ばかりが続くので、華音は途中から文句を言い始めた。


「みんな、いい加減にして!」

「僕は、お人形とか、おもちゃではないの」

「浴衣を着ろとか、素肌でいいとか、無理やり脱がすとか」

「僕の気持を何も考えていないでしょ?」

「少しは自由にさせてよ」

「マジで疲れる」


ただ、華音の文句など、お姉さんたちは何も聞いていない。

シルビアが「うるさい!寝るよ!」と照明を落としてしまうし、春香が華音の腕を引き、布団に横にしてしまう。


華音は、抵抗をあきらめた。

四人のお姉さまたちの抱き枕と化す以外に、なかった。

あきらめた華音は、順番にというよりは、ランダムに抱かれ、何時の間にか、眠りについてしまった。

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