第149話柳生事務所の調査開始、不穏な情報

松田スタッフは、篠山組の上部団体で旧国鉄系左翼で、実態はテロ集団と、そこから資金提供を受けている野党の大物政治家に対しての「裏工作、くの一作戦」を受け持つので、女性関係の「ワナ」をしかける、あるいは相手自らの「凡ミス」を見逃さないという役割を持つ。


柳生隆

「どう?松田さん、何か動きは?」

松田スタッフ

「はい、今・・・女子大生数人でしょうか・・・」

「事務所から出てきます」

柳生隆

「どんな表情?」

松田スタッフ

「うーん・・・あまり機嫌がよくなさそうです」

柳生隆

「女子大生数人同士で、何か会話している?」

松田スタッフ

「はい・・・読唇術で読むと新宿のデモ?天皇制廃止デモと・・・」

「・・・その後のカラオケコンパ?」

柳生隆

「うん、定番のコースだね」

「機嫌がよくないというのは、参加したくないのかな」

松田スタッフ

「はい、無理やりみたいで・・・」

「日当が減ったとか、5万が3万になったとか」

「あの幹部も政治家も嫌いって」

柳生隆

「金か・・・彼女たちも」

松田スタッフ

「カラオケまでは、仕方ないから付き合うけど・・・ホテルは断るみたいです」

「姿をくらますって、言っています」

柳生隆の表情が、また厳しくなった。

「松田さん、小島スタッフと協力してその女子大生と上手に接触して欲しい」

「これは、格好のネタになる」

松田スタッフは、即座に「了解」とのコメントを返している。


柳生隆は松田スタッフの次に、女性スタッフの吉田に連絡。

吉田スタッフは、上部団体の様々な運動の調査を受け持っている。

柳生隆

「どう?篠山組からの資金供給が途絶えて動きがある?」

「某情報では億単位の減少らしいけれど」

吉田スタッフ

「はい、少しずつ」

「デモの動員が難しいみたいようで」

「確実に参加人員が一割から二割に届く程度、減少」

「参加者の高齢化が目立ちます」

柳生隆

「いわゆる学園闘争時代と・・・」

「かつての学生政治団体は?」

吉田スタッフ

「なかなか、減っているようです」

「学生だからできたことであって、社会人として就職してしまうと、難しいようです」

「学生時代に、その政治団体に、のめり過ぎていて就職できなかった人たちは参加していますけれど」

柳生隆

「松田スタッフからの情報で、女子大生へのお手当が5万から3万になったとか」

吉田スタッフ

「へえ、さすが松田さん、でもそうでしょうね、億単位の減少となれば」

柳生隆

「篠山組の聴取が進んだ段階で、マスコミにリークさせるよう動くよ」

吉田スタッフは「はい、楽しみです」とのコメントを返している。


吉田スタッフとの連絡を終えた柳生隆に、柳生清が厳しい顔。

「機動隊が大掛かりな準備を始めたらしい」

「大がかりな天皇制廃止デモの計画があるとのこと」

「何が起こるかわからん、スタッフを増やすか?」


柳生隆は、腕を組み、考え込んでいる。


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