第132話華音の屋敷の一部屋を専用書庫に改装する計画

立花管理人は、神妙な顔で話し出す。

「華音様も分類作業の中で、すでにお気づきでしょうが」


華音は、ここでも素直に頷く。


立花管理人は、話を続ける。

「とにかく貴重な書籍が多くございます」

「それなりの管理が必要と思われます」


華音も、少し考えて、応えた。

「そうですね、とても、僕の部屋に置く類ではありません」

「ただ、託されたのは僕になるので」

華音自身が、少し迷っている様子もある。


立花管理人は、落ちついている。

そして、華音に提案を行う。


「洋館の数ある部屋の一つを、温度と湿度管理が可能な書庫に改装いたしても、よろしいでしょうか」

「その上で、厳重な警備をかけたいと思います」

「もちろん、ここのお屋敷全体を含めてとなります」


その立花管理人からの提案に、華音は全く異存はない。

「はい、早速でもお願いをします」


文化庁の今西圭子も、そのやり取りで安心した様子。

ただ、部屋改装の施工先は予想がついたらしい。

それでも、立花管理人に尋ねる。

「柳生隆さんの事務所に頼むのですか」


立花管理人は頷き、華音が答えた。

「そういう貴重な物の警備関係とかは、歴史と伝統の技術を持つ、柳生隆さんに任せたいのです」


今西圭子は、少し華音を見て笑う。

「華音君、後でじっくりお話と思ったけれど、これで話がついてしまった」


華音は、恥ずかしそうな顔で、今西圭子を見ている。


さて、そんな三人の難しい話が終わった途端、シルビアと春香が華音の腕を引く。


シルビア

「ほら!瞳ちゃんが寂しいって!」

春香

「さっさと並んで食べなさい、この無粋者!」

シルビア

「珈琲とか紅茶ぐらいは運んであげるとかさ」

春香

「あんな可愛い彼女をほったらかしにしないの」


華音は、そこまで言われて、ようやく瞳と萩原担任の間に座った。

華音

「すみません、お待たせしました」

萩原担任は、やさしい笑顔。

「何となく聞こえたけれど、これだけの貴重な本だもの、それが正解と思うよ」

瞳は、華音に少しだけ近寄った。

「私は、難しいこと、よくわからないけれど、華音君も大変だね」


華音は、少し笑って、首を横に振る。

「いや・・・しっかりとした管理・保存できる書庫に収納することにした」

「やはり、僕に託されたとは言っても、生活する部屋にあるのは馴染まない」

「立花管理人の提案で、すごく気が楽になった」


華音と萩原担任、瞳がそんな話をしていると、立花管理人がやってきた。

立花管理人は真顔。

「現在、柳生事務所で、書庫の基本設計を作成中です」

「華音様、今夜、それについて、柳生事務所と打ち合わせです」


華音は、素直に頷き、萩原担任と瞳は、

「はぁ・・・すごい・・・仕事が早い」

と、驚くばかりになっている。


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