第100話柔道部副主将篠山のたくらみ
華音と瞳、文学研究会の面々、クラスの生徒、テニス部、剣道部や空手部などの華音と多少なりとも接触した生徒たちは、華音が文学研究会に入るということは、ほぼ納得しているけれど、中にはそうは思っていない生徒がいるようだ。
空手部主将の剛に、からかい気味に声をかけたのは、柔道部の副主将の篠山。
「おい、剛、お前、一年坊主の奈良の田舎者に、壁まで飛ばされたんだって?」
「噂が入ったぜ」
「お前、マジ、弱いなあ」
「その華音に、朝、校門で喧嘩しかけて、先生方に叱られ」
「あげくのはてに道場破りをされて、コテンパン?顧問まで・・・」
「だから、お前らの空手なんてな、オチャラケっていうんだ、お遊びだって」
ムッとなる剛を、またからかいながら、篠山の言葉は続く。
「チラッと見かけたけれど、どうってことないガキじゃねえか!」
「そんな奈良みたいな超ド田舎から来た一年坊主になあ・・・」
「コテンパンにされる空手部主将剛、顧問松井」
「マジ、笑えるなあ」
篠山は、しつこい性格のようだ。
同じことを、何度も繰り返す。
剛は、それでも篠山に反論。
「ああ、確かにな、ぶっとばされた」
「それは認める」
「じゃあ、篠山、お前は何がしたい?」
「華音にぶっとばされた俺を、コケにしたいだけか?」
「それとも、お前が華音を襲って、怪我でもさせたいのか?」
「要するにお前のほうが華音より強くて、偉いって言いたいのか?」
「文学研究会には入ろうと思う、でも、格闘系の部活には入らないと言っている華音に、無理やり喧嘩でもしかけるのか?」
篠山は、剛の反論を、せせら笑う。
「お前は馬鹿か?」
「俺が華音を襲って怪我をさせる?」
「そんなことを言うわけがないだろう」
剛は、篠山の「せせら笑い」が気に入らない。
「おい!篠山、変なことをたくらんでるのか?」
そして、篠山の柔道を思い出した。
「反則スレスレの柔道だった」
「審判に隠れて、急所狙ったり」
「噛み付いたり」
「ひじ打ちしたり」
「反則がばれて、それで負けても、何も反省がない」
「むしろ、相手が苦しんだり、怪我をするのを喜ぶタイプ」
篠山は、ますます、せせら笑う。
「夜道は暗いしなあ」
「まあ、お楽しみだな」
空手部主将剛と柔道部副主将篠山の会話は、不穏な状態で続いている。
さて、華音は、今日の授業も平穏、静穏。
お昼は、教室内でお弁当。
華音と教室内で「お弁当タイム」をするのが、いい感じなのか、ほぼ全員が教室内でお弁当を食べている。
「今日は、自分でご飯をお弁当箱につめた」
「ふーん、私は、玉子焼きをマスターしたぞ」
「どうしても、ほうれん草が食べたくなってさ、それで煮物にするかバター焼きで迷った」
「私は、フリカケで迷った、シソがゴマ塩かで」
「私は、キムチを入れようと思ったけれど、それは匂うと母に阻止された」
・・・・様々、楽しい会話が弾む中で、沢田文美が教室に入って来た。
華音を見て、「ふーん、今日もお弁当?、レストランで待っていたのに」と、少々文句を言うけれど、いつもの表情ではなく、超真顔。
「華音君、レストランで、変な噂が耳に入ったんだけどさ」
華音は沢田文美の顔をじっと見ている。
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