第94話華音の身体に浮かぶ呪文、育ちつつある呪文
華音、シルビア、春香の三人は、何も恥ずかしがることもなく、お互いに身体を洗いあい、一緒に大きなお風呂に沈んだ。
シルビアの明るい顔が戻った。
「華音、驚いた?」
華音は、素直に頷く。
「まさか、自分のお尻なんて見たことないし、わからなかった」
春香は、やさしい笑顔。
「ついついキツめのことを言ってしまったけれど、ごめんね」
「でも、早く華音に気づかせたかった」
華音は、春香の手を握る。
「ずっと格闘の訓練と勉強だけで、知らないことが多かった」
「迷惑かけたかな」
シルビアは首を横に振り、華音の手を握る。
「気にしないでいい、それより、まだまだやることがあるしね」
春香は、華音の手を強く握り返す。
「勉強はしないといけない、様々な学問をね」
「観音様の呪文もお尻にあるくらいだから」
華音は、目を閉じた。
「その薬師様とかの御力は、時々感じることがあった」
「格闘の修行で、怪我をしても、すぐに治る」
「この人に治ってもらいたいって、懸命に思うと、その人が不思議に治る」
シルビアが華音に身体をグッと寄せた。
「その癒しの御力は、ますます強くなるよ」
「特に、私たち三人が一緒の場合はね」
春香も、同じように華音に身体を寄せた。
「おそらく、その使命を帯びて、私たち三人が生まれたというか、この世に遣わされたの」
「それは、大事に発揮しなければならないと思うよ」
華音は、もう少し話したい様子。
「毘沙門天の梵字って言っていたけれど、それもあるの?」
シルビアは、頷く。
「うん、今はっきりしているのは、薬師様と観音様と毘沙門天の梵字が重なっているということ」
「だから、華音の成長次第で、同時にその力を使えるようになる」
春香も追加のような説明。
「癒しの御力が主体なのか、知恵の御力が主体なのか、あるいは戦闘の御力が主体なのか、それは今の時点では判明できていない」
「薬師様の梵字だけは、生まれてきた時から、はっきりしていたみたいだけどね」
華音は、うなった。
「生まれた時・・・って言われても・・・」
「今西家の圭子さんにも、それを言われたことあるけど」
「全く実感がない」
シルビア
「華音君のお父さんの方針もあったけれど、まずは身体の鍛錬ということで、柳生先生と潮崎先生の修行が中心となった」
「学問を手抜きしたわけではないけれどね」
春香の口調が少し変化した。
「それとね、華音、たいていはそんな感じなんだけどね」
華音が春香の顔を見ると、春香の目が輝いた。
「まだ、他にも、浮かびつつあるというか、成長しつつある呪文があるみたいなの」
「それが、梵字ではなくてね」
ただ、華音は、そんなことを言われても、全く実感がない。
首を傾げていると、シルビア。
「成長しつつあるのは、ギリシャの格闘王ヘラクレスの呪文と言うのか、マーク」
あっけに取られる華音にシルビアはもう一言。
「かのオリンポス12神のアポロン」
華音は驚きのあまり、湯船にズブズブと沈み込んでいる。
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