第75話奈良行きが、ほぼ決定。華音の杉並屋敷に注目?

華音は、おもむろに、話しだした。

「歌が詠まれた場所、山とか川とか海とか、あまり変わっていない場合もありますし、天変地異とか人間が行った工事とかで、変わっている場合があります」

「ただ、山の辺の道は、あまり変わっていないかなあ」


女子たちが、「ふんふん、当たり前」と頷くと、

華音は真顔。

「もし、差し支えなかったら、奈良までご招待します」

「宿泊先は、僕の祖父が関係するホテルがあるので」

「料金的には、かなり格安で泊まれます」

「あとは学園長にもお話をして・・・」


華音がそこまで話を進めた時だった。

長谷川直美

「私、行く」

佐藤美紀

「何があっても行く、華音君と旅行なんて、最高だもの」

花井芳香

「運動部だって、あちこちの地方に遠征するんだから、文学研究会が旅行しても、問題ないよね」

志田真由美は積極的。

「部屋割り考えないと・・・」


華音は、うれしそうな顔。

「和室もありますし、洋室もあります」


長谷川直美が華音に声をかけた。

「私も奈良出身だから、案内するよ」

華音は長谷川直美に尋ねた。

「長谷川部長は、奈良のどちらですか?」


長谷川直美

「私は奈良町、元興寺さんの近く」

「華音君は西の京だよね」

華音は、少し驚いた顔。

「実はお近くだったんですね」

長谷川直美

「自転車で行ける距離というか、道も真っ直ぐ」

華音

「それはそれは・・・僕も元興寺さんとか、奈良町はよく散歩しました」

「砂糖屋さんの老舗があって、飴が好きで」

長谷川直美はにっこり。

「へえ・・・華音君も?行こうよ、あそこ」


・・・と、二人だけで、「奈良ローカル」の話題になっているので、他の女子は気に入らない。


花井芳香

「部長、独占し過ぎです、話題を変えてください」

佐藤美紀

「もう、具体的に万葉集研究の段取りを決めようよ」

志田真由美

「奈良に行くんだから、系列の学園に連絡するとかしましょう」


・・・いろいろと言ってくるけれど、ほぼ長谷川直美に華音を独占された「ジェラシー」である。


華音は、少し申し訳なさそうな顔。

「すみません、ついつい、懐かしくて」


長谷川直美は懸命に華音をフォローする。

「仕方ないよ、つい先日まで、奈良にいたんだから」

「急に都内に出てきて、思い出して、うれしく思うのは当たり前」


花井芳香が華音に尋ねた。

「ところで華音君、杉並に住んでいるんだよね」

華音は、素直に答えた。

「はい、井の頭線沿いの久我山になります」

「実質的には、一人住まいかなあ」

「その表現が難しいけれど」


華音の答えで、文学研究会女子全員の表情が、ニンマリとなっている。

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