第71話前学期の華音の評判?華音のフレンチプレス珈琲

華音の「ためらい」など関係なく、長谷川直美から声がかけられた。

「ねえ、華音君」

「華音君の前の学園の2年生の佐々木あきちゃん、知っているでしょ?」

「同じ文学研究会だったよね」


華音は、素直に頷く。

「はい、指導をいただきました」

「とても、おきれいで、やさしい先輩でした」


長谷川直美は、うれしそうな意味深な笑顔。

「実はね、従妹なの」


華音はびっくり。

「え・・・」

と声との声だけ。


長谷川直美は、ますます意味深な顔。

「いろいろとね・・・聞いているの」


長谷川直美の言葉に、花井芳香、佐藤美紀、志田真由美が、興味津々。

花井芳香

「教えてくださいよ・・・ねえ・・・」

佐藤美紀

「部長だけ知っているなんて、それはいけません」

志田真由美

「ねえ、直美!教えてよ」


華音は、どうしたらいいのか、さっぱりわからない。

それに、特に「変な、あやしいことをした記憶」など、全くない。


長谷川直美は、周囲の動揺を少し静める意図なのか、

「まずね、華音君ね、珈琲とか紅茶、日本茶もそうかな、淹れるのが達人なんだって」

と、それほどあやしくないことを言う。


ただ、そうなると、文学研究会女子は黙っていない。


花井芳香

「淹れて!」

佐藤美紀

「達人の技を伝授いただこうかな」

志田真由美

「ふふ・・・楽しみ・・・こんな可愛い子の珈琲なんて」


華音は、そんなことを言われては、もはや、どうにもならなかった。

すっと席を立ち、小さなキッチンに向かう。

それに一年生の志田真由美が、付き添う。

「華音君ね、ここに珈琲豆、そしてこれがミル、紙フィルターとかドリッパーはここよ」


華音は、まず豆をキャニスターから取り出し、手動のミルで挽きだす。

挽きたての豆の香りが、文学研究会全体に広がる。

そして、目をあちこち、動かして、大き目のフレンチプレスの器具を取り出す。

志田真由美

「え?これで淹れるの?」

「ペーパーとかドリッパーとか使わないの?」


華音は、首を横に振る。

挽いた珈琲粉をフレンチプレスの器具に入れ、お湯を注いでいる。


そして蒸らしながら

「はい、フレンチプレス、最近は紅茶とかお茶で使われていますけれど、そもそもは珈琲を淹れるのに使ったんです」

「ペーパードリップとは、淹れ方も違うし、味も異なります」

「この部屋の豆はコロンビアの良いものだったので、フレンチプレスを使いました」


華音は、蒸らしを終えて、フレンチプレスの器具にお湯を注ぎ、また少し時間をおいて、全員のカップに注ぎ分ける。


文学研究会のメンバーは、ますます興味津々の表情になっている。

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